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Yシャツのしみ抜き料金は適正か?一業者の意見

投稿日:2017-05-23 更新日:

 最近、お客様がYシャツを持ち込むと、シミの箇所などに応じて「加算料金」を取るクリーニング店が増えているという。外に掲げてある「基本料金」だと思って持ち込んだら、いつの間にやら地域の中で一番高額な料金になっていたという話もあり、店舗とお客様間でトラブルになっているという話もある。

 一体なぜそういうことになっているのか? 背景には何があるのか? それは適正なものなのか? 一業者として、一作業者として個人的な考えを書いてみたい。

背景には利用者減と点数減

 バブル崩壊後の社会の転換により、いわゆる「スーツ族」の減少やライフスタイルの変化によって、ホームクリーニング業界は全国的な需要減に晒されている。利用する客数が減れば、当然ながら点数も減る。点数が減れば当然ながら売上も減ってしまう。

 点数減による売上減少にどう立ち向かうか?で業界は二極化した。一つは高単価、高付加価値路線。高度なシミ抜きやウェットクリーニング、アパレルナイズな高度な仕上げなどに代表される希少で付加の高いサービスを提供する方法である。これで半減した需要に倍、三倍、あるいは数倍の料金をいただいて対応しようとした。

 もう一つは低価格路線。こちらの方は地域最安値を提示し、他店ではマネの出来ない料金をお客様に提供し、点数をかき集め売上を確保しようというもの。長年のデフレ経済を背にして、業態規模を拡大させてきた。ところが利用者減と点数減のこの時代、普通の低価格ではもはや客が動かない。

 だから更なる低価格に足を踏み入れなくてはならなくなった。しかしそれでは売上減を吸収できない。だからこその「オプション取り」となるのである。

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クリーニングの経営体質

 クリーニング業の大きな特徴に「仕入れ」の概念が存在しないことがある。お客様の衣類を預かり洗濯してお返しする、という仕事の特性が、それをなくしている。社会的に言う「仕入れ」をクリーニングに当てはめると、ハンガーなどの資材がそれに相当するが昔に比べ増えたといっても10%いくことはなく、5%程度の業者が殆どである。

 一方で一番多いのは「人件費」。いくら設備化が進んだと言ってもクリーニング業は本質的に手工業であり、大手であろうと零細であろうと本質的にやっていることは同じで、量を捌くために必要なのは結局のところ人手である。

 その次が燃料、電気、水道などの光熱費。続いて車などのルートの維持費、そして設備投資にかかる費用の払い(借入金返済やリース払い)である。クリーニング業では変動費が少なく、固定費が多いという構造になっているのである。

 これは例えば月間300万の維持費がかかる業者であるなら、300万円以上の売上を上げれば黒字、それ以下なら赤字となるということで、赤字を回避したければどういう方法であろうとも300万円あげれば赤字は回避される。

 300万円以上を高価格料金で達成しようと、低価格路線で達成しようと、「黒字は黒字」。黒字が達成できるのに変わりはないということである。

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低価格料金は「看板」?

 低価格路線で売上を達成しても黒字となる事情から低価格の旗を掲げて推し進めていたが、客数減点数減の社会状況下で思うように点数が集まらない事態となってきた。これを乗り越えるため各社はスケールメリットを追うべく「出店攻勢」をかけたが、企業の売上は増加しても一店舗あたりの売上の減少傾向が変わるわけもなかった。一店舗あたりの売上を維持しなければ、やがて体力を奪われるのは自明の理。

 そこで一部の業者はそれに歯止めをかけるべく、低価格路線で呼んだ客からいわゆる「単価取り」を強化する手に出た。「単価取り」とはお客様にお金のかかるクリーニング方法を勧めて料金アップを行うもので、単価の上がらない低価格路線では何かと行われてきた営業手法だった。

 それを強化し、シミの大きさや汚れるのが当たり前な襟袖汚れなどまでにオプション料金を設定して、半ば無理からに料金アップをするような形にまでしている業者もいるとのことで、そんなことをすれば、もはや単価設定に意味がなくなってしまう。

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シミ抜き料金の事情

 ただYシャツのシミ抜き料金に関しては色々な事情があるケースも多い。大手業者の中にはYシャツを協力工場(要は下請け)に出しているところも少なからずあり、下請け工場は当然ながら受付価格よりも安い単価で仕事を行っている。

 それでは下請けがやれることは手を抜く以外に利益を得られないため、シミ抜き料金を設定し、その料金の一部を下請けに渡してモチベーションを上げるために大手がシミ抜き料金を利用しているのだ。これは業者と下請けの関係に留まらず、社内でシミを落とした従業員に料金の一部を還元している例もある。

 このように利用者減と点数減の中、単価があげられない社会情勢にあって、シミ抜き料金を数少ない「資金源」として仕事の活力として使っているという話もあるのだ。

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しかしやはり洗いで落とすのが本筋

 だが、オプション料金を多用するということならば、本来の価格設定の意味を損なわないかと思う。というのも、同じような服であっても全く違う処理を行わなければならないようなケースが多々あり、それを全て違う料金で請求しているのか、ということである。

 Yシャツならばダブルカウスやタキシードシャツ、背中ダーツ、前立裏の幅があるものなど、仕上げにおいて機械仕上げだけで対処できないものの料金を変えるのは当然だろうが、シミか汚れか分からぬ人がシミ抜き料金を取ってどうするのかとは正直思う。洗いで取れたものを別料金で取る根拠を示せ、と問われれば詭弁で対処するしかないではないか。

 当方で預かったYシャツである。限界超えまで汚れている。 

 これをYシャツ洗いで一緒に洗ったらこうなった。

 なんら特別な処理をしていない。にも関わらず落ちているのだ。これで取れない汚れを別処理価格で取るというのなら料金取りにも説得力があるのではないか?

 厳しい環境下、オプション取りに走りたくなる気持ちは大いにわかるが、それは詐欺的手法になりかねず、結局のところ信用の切り売りにしかならないのではないかと思う。

 

  

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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