NHKが「臨時国会の冒頭 衆院解散の見通し」と題して、解散総選挙の見通しについて報道している。公明党の山口那津男代表と政府高官(=官房副長官)の話として伝えているもので、事実上9月28日の臨時国会開催時での衆議院の解散と総選挙が確定したと言ってもよいだろう。
自民単独絶対安定多数、与党(自公)絶対的多数
仮に現状で選挙に突入した場合、安倍晋三政権の継続条件である与党過半数自体は確定事項で、自民党だけで衆議院絶対安定多数のライン「266議席」を、自民党と公明党の与党で圧倒的多数である「310議席」を確保することが十分に可能な情勢である。
これは野党の民進党が代表選後のゴタゴタと離党者続出によって戦える情勢にないこと、民進党がグラついているため「野党共闘」路線が思うように進んでいないこと、噂される新党「国民ファースト」が結党自体もたついていること、この三点が原因である。
現状、野党側はしっかりした地盤のある共産党を除き、候補者調整どころか候補者擁立さえままならぬという有様で、臨戦態勢というにはあまりにも程遠いと言わざる得ない。
対して自民党側は様々な問題議員がいようとも、過去二回の選挙で多くの候補者が現職議員で選挙区の殆どが埋まっており、問題がある選挙区の調整のみが焦点であり、肝心の候補者擁立に苦心することはない。
新区割りの選挙戦が野党側を更に苦しめる
仮に今回、解散総選挙になった場合、今年の5月に決まった新区割で戦うことになる。選挙区の境界線が変わるわけで本来であれば選挙区議員が多い自民党内で内紛が起こって不利な要件になるはずなのだが、突発的な不意打ち解散は各地方組織や議員間の利害をふっ飛ばしてしまう。
逆に候補者擁立のままならない野党側では全国的な選挙区情勢を把握できている者が誰もいない状況下で選挙戦に突入せざる得ず、新区割によって余計に候補者擁立が難航し、選挙戦に挑むどころではないような有様となる。
このように本来なら「責める野党、守る与党」とならなければならない構図が現状「責める与党、守る野党」へと変化してしまっているのだ。相手側は議席減を恐れずに選挙戦に打ってくるわけで、現状として野党側に有利な要件は何一つない。
焦点は解散総選挙の名分のみ
とは言っても「衆議院解散」に打って出る以上、解散の「名分」が必要になってくる。ところが今の政権を取り巻く状況を見るにつけ、それらしいものは何一つない。
具体的にいうのなら、「森友」「加計」問題、自民党所属議員らの相次ぐトラブル、「経済に全力」といい好景気と伝えられながら下落を続ける家計支出など、正直言っていいことは何もない。北朝鮮のミサイル問題で「非常事態」と言いながら、その口で解散と言ってしまえば何の非常事態かと言われかねない。
そこで浮上してくるのが「消費増税」問題である。逆に言えばそれしかないとも言えよう。というのも安倍政権は消費税を止めたり、上げたり、凍結したりすることによって「維持」されてきたからで、ある面この政権の「裏テーマ」と考えてもよい。
消費増税の「凍結」を掲げてくるのか
10%の消費増税は二度にわたって延期され、現在のところ2019年4月1日に行なわれる予定である。一度目は2014年(平成26年)衆議院解散直前に、二度目は2016年(平成28年)参議院選挙直前に延期を表明、両選挙は自公与党の大勝に終わった。
つまり選挙と消費増税延期は今や切っても切れない関係となってしまっているのだ。今回の選挙を終えれば消費増税が行なわれる予定の2019年までは国政選挙は普通に行なわれない。その間解散すれば総選挙を行うことはあり得るがその可能性は限りなく低い。
不祥事相次ぐ政府与党の評判が決して芳しい状況ではない中、勝ちを確実なものとするため、この消費増税を絡ませてくるかどうかが、市井の一般人にとって最も重要で大切なことである。逆に言えばそれだけを見るだけで良いし、それ以外のものを見ても仕方がないと言えよう。