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続・Yシャツ料金のホントの話

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 「Yシャツ料金のホントの話」を書き終わって、改めて考えてみると他所の業界の人などからは「ホントのホントにそうなのか」と言われそうな話ばかりだな、と改めて思ってしまった。

 Yシャツ料金の設定自体にあまり根拠がある訳ではなく、仕入れの概念がない、製造原価の概念がない、あっても「なんちゃって」生産方式なので、論理計算で価格設定が行われていないなど、それでやっていけるのか?状態だろう。

 いや、逆にだからこそ我々はやってこれたのかもしれない。そうでなければ「人のものを預かって返す」という限りなくオーダーな仕事をアバウトに線引きして、価格を」設定し、価格体系など作りようもない。

 例えばジャケットとブラウスとワンピースの線引きなんて、年々ボーダーレスになっている。これを分けるのだけでも一苦労ではないか。これを何で見て、どう受付するのか、どの価格にするのかも業者が常に抱える悩みの一つである。

 そのあたりの複雑怪奇なクリーニング業界を引き続き「Yシャツ料金」にスポットを当て、当方の事情や私が見聞きした話や思っていることを更に書いてみた。 

Yシャツ価格、当方の場合

 当方の場合、Yシャツの値段はというと180円から500円までとばらつきがある。しかし安いから雑にとか、高いから丁寧にとかいうことは一切なく、一緒に洗い、一緒に仕上げ、同じ包装を行っている。

 そもそも一緒に洗っているのに「このYシャツは安い」とか「このYシャツは高い」とか作業をしていて判る筈もない。だいたい、安いから手を抜くとか、高いから丁寧にするなんて発想をさせるような仕事をさせる方がどうかしていると思う。

 実は多くの借金を背負っている頃、不利な条件で安く仕事を請負わされた経験がある。それは相手側の従業員が出てこない日曜日分の荷物「だけ」を日曜日中に納品するというもので、価格は100円だった。こういう仕事を他社に強いて利益を得る行為はまさに「私腹を肥やす」のと同義である。しかも自分のところの仕事を優先しろとか、品質が悪いとか言って叩きにくるのだから始末が悪い。

 こういう手法を自分がされるのも嫌だが、他者に強いるのも間違っている。しかしこうしたフザけた仕事であってもスタンスは変えたことはない。色々あったが結局そうする中で、価格差に大きなバラツキが出るようになっただけの話だった。

 要は相手先との交渉結果や要望によって、価格が下がったケースや価格が上がったケースがあったということで、例えばマージン欲しいから上げさせてとか、仕事を増やしたいから下げさせてとか、理由は様々。だから同一仕事で別価格、仕事内容と価格が全く一致しない。

 しかしだからといってそれが不公平であったり、間違っていたりする訳でもない。そのため当方の場合は堂々と言えるのである。

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単独デフレスパイラル

 毎日通るルートの途中に一軒のクリーニング店がある。小規模業者の直営店とおぼしきその店は、よくセールをする。最初Yシャツを140円でセールしていたのだが、130円となり、最近では120円になってしまった。

 仮に一日100枚Yシャツを集めていていれば14000円。それを130円にすると13000円となり、1000円減る。これを穴埋めするためには8枚多く集めなければならず、利益ということを考えれば140円時代に比べ15枚は増やさなけれなならないはずだ。ところが現実というものは計算通りに行く訳がないのは世の常である。

 それでもこういう下げ方をするということは、ひとえに仕事がないからだろう。というかあればセールをしてもセール金額自体を下げる必要はない。そもそもクリーニング業者にとってのセールとは、新規客の獲得好機のためであって、既存客への利用動機促進ではない。

 前回記事で説明したようにクリーニング業では「仕入」の概念がないので、他の業種、例えば販売業とは違い、セールだからといって仕入業者に値引き要求をすることはない。元々値引き要求して仕入れているものを値引きしようがないからだ。

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Yシャツ屋

 しかし例外があって、例えばYシャツを「下に出す」(同業者に下請けに出すこと。白を出すともいう)店などは、「仕入」なので値引き要求を行うことができる。Yシャツの下請けを行う業者は昔からおり「白屋」「ランドリー屋」と呼ばれている。

 「ランドリー屋」はYシャツ以外にもシーツや白衣などの「駄物」と呼ばれる「白物」や布団毛布といった「大物」などをクリーニング業者から請け負う。

 30年くらい前などはどこも仕事量が多かったため、Yシャツ設備をせず外注する業者が多かった。Yシャツの下請け相場は私が知っている限り80円~100円程度。そのため値引きに応じようもなく、セールを打つ際に「ドライ品のみ」とし、Yシャツを除外する一因にもなっていた。

 ただ近年、荷物自体が減少し、Yシャツの多い業者は自家設備を行い、少ない店は外注せずにアイロンで自家処理するなどしてしまったため、多くの白屋は廃業してしまった。残ったところも以前なら聞く必要もなかった要求まで聞かざる得ないような環境が今の業界には存在する。

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おわりに

 書けば書くほど謎が深まる「Yシャツ価格」の話だが、これは実際に作業をし、工場を運営し、店舗を開き、得意先周りまで体験しないと判らない部分があるかもしれない。

 いずれにせよYシャツ価格、クリーニング料金に定見自体なく、相場感や感覚や空気が価格を決める重要な要素であることだけは間違いない話で、ここらが理解できてくると、料金を見て利用することよりも、確実性であったり、便宜性の方に自然と重きを置かざる得なくなってくるのではないかと思う。

 これにYシャツ仕上げ設備の変遷を加えるならば、もっとYシャツ料金のホントのところが更に分かってくるし、どうして新興激安店が古参激安店を追いまくれるのかまでもハッキリと知ることができるだろう。この部分についてはまた改めて書いてみることとする。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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