blog 最新情報

お店が潰れる 米国小売業の崩壊から日本の店舗の未来を見る

投稿日:

amazonを筆頭とするインターネット販売が拡大し続ける中、アメリカでは様々な小売業の実店舗が次々と閉店していっているという。

 「崩壊間近、アメリカの小売業」ではその一端が紹介されている。共通している流れは、全米のショッピングモールに展開しているブランドが全店舗を閉鎖し、好調なオンライン販売一本に絞るという内容だ。

 実店舗のコストを落とし、高い利益率を確保していくといった説明がアナウンスがされていることは想像に難くない。著名な店舗のショッピングモールからの撤退は、モールから客足を更に遠のかせる要因となるだろう。

 アメリカではまさしく「人はいるのに街から客が消えていく」が現実のものとなっている。

ネット販売で局面展開というが

 しかしいくらオンライン販売が好調だとは言え、数百店舗分の売上を上げるに至る訳はない。確かにネットは世界に繋がっているが、小売りの多くは自国の範囲内での活動が精一杯である。

 また実店舗では客足が遠のいたとはいえ、店を開いていれば一定の売上が上がってくるわけで、数百の窓口からの売上を競争が苛烈なオンライン販売での独立サイト一本で賄えるはずもない。

 実際の所、客足が遠のき、売上が減少し、店舗の維持が難しくなってしまった末の「退却戦」であるのが実情で、店舗を出店維持するコストが出せないという厳しいアメリカのモール事情の反映と捉えるべきである。

 というのも店舗の展開には様々な労があろうとも「拡大」路線であり、銀行からの借入や取引業者の協力が得やすいが、店舗の閉鎖となると話は別で、借入が難しくなり周辺の協力が得にくくなるのが一般的だ。

目次に戻る

店舗閉鎖の難しさ

 当方は小さいながらもクリーニング業を営み、複数の店舗を構えて長年営業を続けてきたが、下がり続ける売上を鑑みて全店舗から撤退した。従来営業は店舗営業が過半を占めていたが、外商部門のウェイトが年々拡大し、最終的には売上の6割に達する局面に至り、撤退を決断した。

 営業店の撤退は当然ながら単にシャッターを閉めるだけに留まらない。借り物であるならば店舗内の什器備品設備を撤去し、従業員は解雇、あるいは配置転換を行うなど様々な後始末を行わなければならない。

 物販であれば閉店セールで在庫を一掃して現金を確保するが、クリーニングの場合は事前にお金を受け取っているため、預かり品の引き取り業務を行なっていく。

 店舗の撤去は引っ越しと同じで基本的に業者に依頼する訳で、それだけで費用が発生する。荷物を移すなら搬出搬入の費用、解体廃棄なら処分費用も必要だ。

 当方の場合には一つの店舗を他の業者に営業を引き渡し、もう一つの店舗では店舗内設備や什器備品、看板に至るまで全て自力撤去を行なったことで撤去費用自体はゼロに収めたが、こんなケースは稀だろう。店舗撤退は退却戦であり、それ自体何の利益も生み出さない虚しい作業だ。まさに茨の道である。

目次に戻る

コストダウンだけでは立ち行かない

 店舗を撤退したからといって、店舗維持費がなくなったから経営負担がなくなるかと言えばそうでもない。確かに維持費はなくなるが、売上そのものも失ってしまうため、経営のパイが小さくなってしまうのだ。

 パイが小さくなると、それまで問題にもならなかった出費が負担になったりする。個人で言えば30万円の給与収入があった人が家賃は安い所に引っ越したものの、給与が20万円になったと考えればよい。

 例えばとして2万円の小遣いがあったとする。2万円の小遣いが30万円に占める割合は6%だが、20万円ならば10%となり、見過ごせない出費となる。仮に家賃が下がっても給与が10万円下がった分が穴埋めできていないのだから当然の話なのである。

 このようにパイが小さくなるということは、資金繰りの余裕を減らし、経営戦略の選択技も減らす。30万円の利益から10万円の支払いを行うのは余裕があっても、20万円の利益から10万円の支払いを行うのは正直「しんどい」。これは次の展開を行うために借入を起こすにも、借入額が以前より少なくせざる得ない事を示している。

 このようにコストダウンを図り利益率を伸ばしたとしても利益額は減るわけで、店舗撤退だけでは何の解決にもならない。企業が企業たらしめるには「売上」を確保していく以外に道はない。

目次に戻る

改めてネット販売に活路と言うけれど

 あらためて書くが、比較的小規模の展開をしている店ならば、店舗売上より多くの売上をネットショップで行うことが可能だが、数百店舗展開している企業や、超大型店を擁する企業ならば、いくら「ネット販売に力を入れる」といっても、その店の穴埋めができるほどの売上を上げられるとは思えない。

 具体的な例を上げればファッションサイト売り上げトップのZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの売上がおよそ800億円。対して衣料最大手のユニクロの国内売上が約9000億円。年間三割以上アップという驚異的伸張を続けているZOZOTOWNだが、それでも路面最大手の売上とは桁が違う。 

 しかし業界問わず、路面店における「客離れ」の傾向は一般に思われているよりも深刻で、売上を伸ばしているところは店舗展開と単価アップで達成しているのが実情である。つまり客数を落としながら売上を上げているわけで、更に客が減れば、やがては売上は下がるしかない。

 そのような状況下、路面店展開を行っている企業は客数を確保するためには何らかの形で窓口を増やしていくしかなく、そのためにはネット販売に傾注し、少しでも顧客を確保し続けていかなければならないという事情がある訳である。

目次に戻る

街からお店が消える日

 ただネット販売は伸び続けているという現状、このままではアメリカと同様にデパートやショッピングモールをはじめとする路面店は客数減に蝕まれ、ジリ貧に追い込まれてしまうのではないかと思われる。企業にとって店舗展開自体が足かせとなる時代が到来することになるのだ。

 更にもう一つ言えば、アメリカと異なり日本では「超高齢化社会」が進行しており、購買意欲の衰える高齢者が多数を占める社会となるため、構造的に購買層が先細る一方という問題がある。もちろん貪欲な購買意欲があるお年寄りの方はおられるが、現役世代に比べて少ないことは紛れもない事実で、全体として日本の国内消費は縮小傾向となるだろう。

 お店の売上が減れば店舗を持つ企業は店舗の維持費用を捻出できず、次々に店舗を閉鎖していく以外に道はない。そして失った売上をどうしていくかによってその企業の生死が決まっていくだろう。

 しかし店が潰れても「ネットがあるから大丈夫」だと思っていたら大間違いで、ネットによって消費者が多くのものが選べるはずなのに、逆に選択技を失っていく時代が到来する事になるのである。

 理由はモノを作る側が多様な販売窓口を失ってしまい、数量を捌きにくくなってしまうために、合理化、つまり作るものの種類を減らしていかなければ経営が成り立たなくなってしまうからだ。多くの製造企業が「売れ線」志向、一点集中主義を採用すれば、一時は突破できても、シャープの二の舞いになる可能性は高い。

 シャープは1990年代、会社の生き残りをかけ、他の電機メーカーとの差別化を図るべく、電卓戦争などでノウハウを得た「液晶」「LED」「太陽電池」を三本柱に経営資源を集中させる戦略を取った。

 これによりブランドイメージを向上させたが、その3つの柱全てが他国の企業に乗り越えられたとき、会社の存在意義を失った。強みが弱みに変わってしまったのである。

 皮肉なことに便利になれば便利になるほど選択技を失っていき、不便な生活を送ることになるかもしれない。

にほんブログ村 その他生活ブログ 掃除・洗濯へにほんブログ村 ライフスタイルブログ シンプルライフへにほんブログ村 その他生活ブログ 片付け・収納(個人)へ

-blog, 最新情報

関連記事

家で洗ったシャツワンピースがクシャクシャで

 妻が洗ったシャツワンピースがクシャクシャだから仕上げて欲しいと持ってきた。あれ?麻の帽子の時に作った仕上溶液を使わなかったのかと聞いたら、「そういう発想がなかった」とのことで、正直「はぁ?」という感 …

家庭用洗濯機の頂点を競え!Joshinwebの企画

 家電販売大手の上新電機が展開するJoshinwebで最新鋭の洗濯機で洗浄力を競う「洗濯機頂上対決」なる面白い企画が最近アップされている。  これは日立のビートウォッシュと、同じく日立の新型ドラム式洗 …

洗顔用石鹸の泡立ちに見る軟水活用法

 家庭向けシャワー用軟水器「アクアソフト AQ-S401」を導入していて以来、我が家における軟水の用途は広がるばかりである。今回はそのうちの一つ、妻が洗顔用石鹸を泡立てる際に軟水を用いている件を中心に …


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

    知られざる「タイムズクラブカード」の使い方  タイムズ(Times)と言えば駐車場サービスの大手であり、街のあちこちに時間貸し駐車場が展開している。最近では路上の駐車場に留まらず、店舗の駐車場スペースなどの管理も請け負って「タイムズ駐車場」とす ...

    軟水器アクアソフトAQ-S401 レビュー  エントリー「家庭用軟水器 アクアソフト AQ-S401 概要」や「アクアソフトAQ-S401、ネットの片隅で起こった異変!」で度々取り上げてきたヤマダ電機子会社の住宅機器メーカー「ハウステック」が出 ...

    家からウタマロクリーナーが消えた日  風呂場にあった「ウタマロクリーナー」のスプレー容器が消えていた。妻に「どこにやったの?」と聞いたら、「要らないから捨てた」という。まだ残っていたはずだったのにどうして捨ててしまったのか・・・・・ C ...

    本当にいいのか?日立ビックドラムの「ナイアガラすすぎ」の是非  クリーニング業界で「ナイアガラ」と言えば、東京洗染機械製作所の「ナイアガラドライ」を真っ先に思い出す人も多いだろう。大流量の溶剤を一気に流して洗うのを「ナイアガラの滝」に例えたネーミングだが、今回は ...

    嘘だらけのネット情報。真のアクリル毛布の洗い方  家庭で使われる毛布の中でアクリルの毛布の割合はかなりのものになると思う。クリーニングの需要は年々減りつつも出てくる毛布の殆どはアクリル毛布。家やコインランドリーでも相当程度洗われているのではないかと ...

    switle「スイトル」の実機レビュー1  以前より注文していた湿式掃除アタッチメント、switle「スイトル」がようやく届いたので早速、開封することとした。 Contents1 重くない箱2 スイトル本体を付属品と繋げる3 給水タンクの構造 ...

    家庭用軟水器三選! 3つの軟水器を徹底比較!  エントリー「家庭用軟水器 アクアソフト AQ-S401 概要」でも書いたように、家電大手ヤマダ電機系列のテックハウスが昨年12月に家庭用軟水器を発売したことによって、ニッチな市場である家庭用軟水器周 ...

    正直、アイロンにスムーザーは「要らない」と思う  「スムーザー」とは、花王が販売するアイロン用シワとり剤の名称であり、正式には「キーピング スムーザー」と言って、その名の通り糊剤に位置付けられる製品である。  で、いきなり「要らない」なんてタイトル ...

    家庭用軟水器 アクアソフト AQ-S401 概要  これまで洗濯と軟水の関係についてしばしば取り上げてきたが、あくまで業務用軟水器を使った話だった。では家庭用軟水器があるかといえば、実はなかなかというのが現状である。というのも日本は元々軟水の国で、浄 ...

    軟水とは何か?洗いのための軟水  エントリー「「すすぎ」問題を解決する方法」で洗濯に向いた水(軟水)を用いいることで洗剤量を減らすことができる点を書いたが、クリーニング業者がその軟水を用いることは、実は容易なことなのである。  それ ...