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濃色のジャケットとシャツから見る無印良品の実際のところ

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 「無印良品」(以下、無印)は西友のプライベートブランドからスタートし、今や誰もが知る総合ブランドである。現在は良品計画が展開しており、売上高は3332億円(2017年)に達する。

 扱うアイテム7000種類以上に及ぶ商品の中には当然ながら衣料品もあり、様々な服も販売されている。今回は無印の濃色のジャケットと濃色のシャツを例にその中身に迫ってみたい。

ジャケットとシャツの生産国

 今回の無印のジャケットとシャツは生産国がそれぞれ違う。

 濃色のジャケットの生産国は中国。洗濯表示はインナーなどと同じ内容で、ドライ洗濯表示がないものである。こうした場合、一般的には水洗処理のみと解釈して処理する。

 濃色の綿は脱色しやすいが、このジャケットも多分にもれず脱色している。これは日光や蛍光灯などから出ている紫外線による色素分解と、洗濯による脱色である。

 シャツの方は生産国が「インド」。インドは「インド綿」の産地で、昔から特定の綿製品に関しては「インド製」のものが流通していた。しかしこのシャツはそういったものではなく、「クリーニングの現場から見たユニクロ製品の変遷」で触れている通り、コストダウンのためにさまよった果てにインドにたどり着いたのだろう。

 そういう点では無印の衣料も他のアパレルが置かれている環境と全く相違ない状態にあると言える。

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衣服の脱色のメカニズム

 品質表示では水洗のみである濃色の綿のジャケット。しかし通常水洗すれば、より脱色してしまう。そこで今回はドライクリーニングを行なってから水洗処理を行う。

 よく水洗できそうな素材形状なのに水洗不可表示になっているのは、水洗よりもドライクリーニングの方が色が流れにくいため、服の脱色や移染を防ぐというトラブル回避ためである事が多い。もっとも意味が分かっていなくて不可表示にしているケースもあるが、今回はその件については触れない。

 水洗よりもドライクリーニングの方が脱色しにくい理由は、生地の着色を「染料」で行っていることに起因する。染料とは「水溶性」で、染料を水に溶かして生地を染めているため、水に漬けると色が動くのである。

 それを防ぐため酢酸などの酸性物を用いて色を止めるのだが、特に濃色のものは完全には止めきれず、色が流れるケースが多い。また海外製品などは色止め工程で色合いが変わることを嫌い、色止めそのものをしないケースもある。

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濃色のジャケットの洗濯

 ドライクリーニング処理を行なった濃色のジャケットであるが、このままでは汗などの水溶性の汚れが取りきれてはいない。また色が抜けてまだらになった部分の色素をある程度ボカすために「色素回復剤」を用いるため、水洗処理をする。

 とはいっても、この服の状態で洗剤や温度を用いた洗濯を行えば間違いなく脱色がひどくなるため、バケツに水を溜めて「色素回復剤」「綿麻仕上剤」を溶かしたところに濃色のジャケットを浸け込む方法で処理した。

 この方法であれば服の色素にダメージを与えずに水溶性の汚れもある程度は落とせる。これはドライクリーニングで服に付着している油溶性の汚れを取り除いて、油膜を除去しているため、水が生地の中に浸透し、水溶性の汚れをある程度溶かすからである。

 実際浸け込むと、それでもやはり色が出た。これはこの服の「染色堅牢度」が低いからで、処理の問題ではないことは水に浸けただけということを考えても明らかだろう。「どこのブランドの商品だから大丈夫」なんてものが幻想なのはこれを見てみても明らかだろう。

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仕上げ処理

 浸け込んだジャケットは脱水を行う。この時の脱水は10秒程度に留めること重要で、これによって絞りで起こる脱色ダメージを減らし、絞りジワが発生しないようにするのである。その後は立体整形仕上機で乾かしながら仕上げを行う。

 かなり脱色した部分がぼやけているのがわかる。酷かった胸ポケット辺りの縦に走っていた脱色部分も若干ボケた。八割程度乾燥させると機械から外して、襟部分などをアイロンで仕上げて完成となる。

 色抜けの部分はかなり回復した。「色素回復剤」は色を付着させるのではなく、服の光の反射を変えることで色抜けをぼかす材料なので、厳密には「色戻し」や「染め」ではないのだが、下手にそのようなものをするよりかは費用もかからず自然に見せることができる。

 今の時代は服の値段が下がっているので、特殊なメンテナンスに高額費用をかけるより、新たに買った方がよいのではないかと思う。

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おわりに

 ファンが多いことで知られる「無印良品」だが、衣料品に関しクリーニングの現場から見れば他の日本発の衣料といい意味でも悪い意味でも「変わりのない」製品である。

 日本という国に拠点を持ち、日本という国を主戦場として服を売っている限り、仕入れや生産などを同業他社と違う方法を採ることは難しい。それゆえ服の特性などはどうしても似通ってしまうのだ。

 同価格帯の場合、違うのは「ラベル」だけ。そう思っていても支障はないだろう。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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