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洗濯機メーカーの洗剤濃縮洗浄プログラム

投稿日:2017-06-23 更新日:

 古くはミーレ、ワールプール、エレクトロラックスの外国メーカーが先鞭をつけ、90年代に入ってシャープが拓いた家庭用ドラム式洗濯機市場は今、パナソニックと日立の両雄が立ち、両者しのぎを削っている情勢だ。

 その両社のドラム式洗濯機の洗浄コースにはある共通項がある。それはパナソニックの「約40℃においスッキリコース」と日立の「温水ミスト90分プログラム」が共に「洗剤2倍量」を使うという点である。

 一体何故倍量入れなければならないのか、その効果はあるのかということについて検証していきたい。

どうして洗剤が倍量いるのか?

 洗浄法はパナソニックが二回洗い、日立がミスト吹付けとそれぞれ違うのだが、両社のページに共通して書かれていることがある。それは「温水」と「酵素」だ。

 共に洗剤中に入っている「酵素」の力を温水で発揮させ、汚れを落とすことを謳っている。つまり酵素の反応を強めるために洗剤を二倍入れるというのである。その理由は花王の洗剤「アタック」の成分表示に示されている。

界面活性剤〔22%、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル〕、アルカリ剤(炭酸塩)、水軟化剤(アルミノけい酸塩)、工程剤(硫酸塩)、分散剤、蛍光増白剤、酵素

花王サイト「 高活性バイオEXアタック」成分表示より

 「酵素」の位置を見て欲しい。酵素は一番最後にある。つまり洗剤の中で一番入っていない成分であるということ。入っている量が少ないから洗剤を「倍」入れるのである。

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洗濯における酵素の役割

 酵素は特定の汚れに反応する作用を持っている。洗濯ではこれを利用し、蛋白質に反応するもの、油脂に反応するもの、澱粉に反応するものなどを使い汚れを落とす。基本他材料より高額であり、「力価」(酵素の動きの力の単位)の強いものは更に高い。

 反面で力価の高い酵素は、反応が強すぎて扱う手がボロボロになったりするので、高ければ良いというものではない。しかし、他の材料に比べ高いことに変わりがないので、コストを考えつつ洗浄力を高めるため少量を配合しているのである。

 私のところのような配合では家庭用の粉末洗剤は4、5倍の価格になるのではないかと思われる。それぐらい高い材料なのだ。それを洗剤メーカーは常温で反応しやすい酵素をわざわざ開発して入れるなどしているのである。

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プログラムの実際の汚れ落としについて

 それはもちろん大きな効果がある。温水を使い、従来の倍の酵素を使って洗うのだからむしろ取れない方がおかしい。倍の酵素で様々な機械力(ドラムの回転力、シャワーや水流)を使って汚れを落とす図を両社は描いたのだ。

 ただ、その洗浄法は一方で大きな副作用をもたらす。「洗剤の残有量」だ。酵素が「倍」ということは洗剤も「倍」になるのは当然で、この洗剤の除去のため、多くの水が必要になってしまう。つまり洗剤は汚れを取るために不可欠なものだが、同時に「汚れ」にもなるのである。

 問題はそこまでして落とさなければならないのか、という点にあるのかもしれない。繊維の黄ばみを酵素「のみ」で落とそうというのも若干無理があるのではないかと思う。

 具体的に言えば「酸素系漂白剤」を併用した落とし方を行なったほうが効率が良いし、第一確実に落ちる。だがメーカー側は色柄物の脱色や、繊維の痛みやすさ等から、その使い方から引いたのであろう。

 その点、酵素ならそういう色柄物が脱色がないのは明らかだし、漂白剤に比べれば繊維が痛む可能性も少ないので、リスクを回避しつつ洗浄力をアップさせる方法として採用したのだろう。

 だが洗いというものは、一つの力のみに頼った洗浄法では汚れ落ちが偏るので、複数の力の連携プレーで落とすことを考えたほうが、結局は落ちる。

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まとめ

 このように洗剤倍量洗濯「洗剤濃縮洗浄法」は確かに汚れは落ちる。だが、洗剤量を減らしつつ洗浄力を維持しよう、あるいは強化しようという私の考えとは合致しない。

 従来の半分以下という「減洗剤」で、従来より洗浄力を高める研究を続けている当方からすれば、辛口に言えば「時代に逆行」しているとも言えなくもない。

 もちろん各社の研究取り組みには賛辞を贈りたいのだが、それでもやはり譲れない部分は譲れないのである。

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現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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