クリーニング実践編 最新情報

洗えないラビットファー付きダウンを普通に「洗う」

投稿日:2017-05-11 更新日:

 近年、ダウンジャケットに色々なものをつけた服が販売されている。今回のケースは襟とフード裏にラビットファーをつけたものだった。複数のクリーニング店から断られ、ウチに流れ着いてきたという話。

 で、品質表示マークはというと。。。。

 この通りオール✕表示。だからどこも断ったのである。株式会社ビギさん、そもそも洗えない服、責任を持てない服を作ってはいけません。洗える服を販売してください。企業としての責任逃避はいけない。

どうして洗えない「表示」なのか

 このダウン。メーカーサイドは何を恐れて✕表示にしたのか? 原因はメーカー自身がつけたラビットファーである。ラビットファーとはその名の通り「ウサギの毛皮」なのだが、これのなにが問題かと言えば「水」と「脂」の問題である。

 ドライクリーニングとは基本的に溶剤(日本の過半のドライ溶剤は石油系)なのだが、湿気や衣料が吸った水分、水溶性の汚れを落とすために前処理を行った水分(この水でドライで水溶性の汚れを落とす)などで、一定割合で溶剤内に可溶化した「水」が存在する。

 この水が多ければ(溶剤100Lに100cc以上可か未満かレベル)、ラビットファーは溶剤内の水を吸って伸縮を起こし、風合いを悪くさせてしまうことがある。

 またドライ溶剤には当然ながら油を溶解するため、生き物の毛であるラビットファーを脱脂させてしまい、結果ガサガサとなってしまう場合があるのだ。

 こうしたケースでの風合いの変化は、ドライクリーニングの特性であるため業者に落ち度がある筈もなく、当然ながらメーカーの責任となる。品質表示オール✕はそれを回避するための苦肉の策だった。

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ではどうやって洗うのか

 業者側としてはまずドライ溶剤の液管理を普段から行っておくこと。具体的には前処理の廃止、溶剤タンク内への「脱水剤」の投入や吸水ポリマーの導入である。何よりも水を抜く、水を抜ききる事が大切で、これができればラビットファーが水を吸う量が減るため伸縮等のリスクはほぼ回避できる。

 次に脱脂の問題であるが、これは洗った後に抜けた油脂分を加えることで一定解決できる。これは皮革毛皮衣料取扱の洗濯業者が行ってきた方法なので確実だ。ただそれを行なうには手間がかかるため、別注で溶剤内で油脂分を加えることが出来る資材を作って、「油で溶かしているのに脂を加える」という冗談のような本当の話を実現させている。

 この業界の「二律相反」を体現したお話で、成分法則云々に拘っていてはとてもではないが対応できない。

 上の写真は洗った直後のラビットファーのダウン。汚れていたため15分洗浄した。洗った後、2日(パーフェクトな液状態ならば一晩)干して乾燥機に一時間回す。これによってラビットの毛がしっかり立って、ダウンも膨らむ。

 乾燥出てきたラビットファーがこれ。写真の範囲でも光沢と上がり(業界用語で衣服の洗い上がりのこと)が誰の目にもわかる。触りは購入時よりも良いかもしれない。

 このようにクリーニング業者は時としてリスクを取らざるえない状況にたたされることがある。それを回避しているだけでは進歩や技術革新は生まれない。かといってリスクばかりを背負うのも問題で悩ましい話である。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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