非常に汚れたポリエステルのカーテンが出た。カーテンが汚れているのは当たり前だが、長年吊っていたのだろう、帯電してしまい、擦れた部分を中心に黒ずんでしまっている。
当たり前だがこのままでは返せないので、さっそく水洗した。
アルカリで落とす
「嘘だらけのネット情報。真のアクリル毛布の洗い方」でも指摘したように、ポリエステルやアクリルは帯電しやすいため、埃を吸いやすい性質がある。よって中性洗剤では対処できないので、粉末洗剤を使って液相をアルカリにして洗濯しなければならない。
温度をかけ、酸素系粉末漂白剤を加えて洗濯した。ところが御覧のような擦れ汚れ。その程度の洗いだけでは汚れは落ちない。帯電によるスレ汚れは実は非常に落ちにくいのだ。
この擦れ汚れの表面には油膜が張ってあり、それで水の浸透を阻害して汚れが取れにくくなっている面があるので、続いてドライクリーニング処理を行った。
ドライの中では洗浄力が弱い部類の石油系とはいえ、油性の落とす力は水洗に勝る。洗浄を終えたカーテンはこのようになった。
最初に比べればだいぶマシになったとはいえ、水洗とドライのWクリーニングであってもここまでが精いっぱい。そこで切り札のあの洗いの中に入れて洗浄することにした。
カーテンをYシャツ洗いで洗う
一見すると非常に無茶なように思われるだろうが、60℃以上という高温洗浄だったYシャツ洗い=ランドリー洗いも洗浄技術の発達によって40℃洗いとなったわけで、何もYシャツにこだわって洗う必要は全くないのである。
この洗いの中には例えばポリエステルのズボンであったり、ブラウスであったり、あるいはアクリルのセーターなどを入れれば、その圧倒的な洗浄力によって汚れが落ちきり、新品以上の光沢感が出るだろう。
ただ工程上、糊を落とさなければならないこと、業界の固定概念によって一緒に入れにくいという事情があって、多くの人は躊躇するだろう。その点に関しては全てをそう洗う必要はないが、汚れに応じた洗いという観点で考えればよいのではないかと思う。
で、Yシャツ洗いで洗った結果はこれである。
黒ずんだ汚れは完全に取れた。では最初からYシャツ洗いで洗えばと思う向きもあるかと思うが、以前の洗いで一定程度取れていたから完全に取れたといえるので、そこらは何とも言えない。
汚れを取った決め手はなにか?
おそらく誰しも思うことだろう。この頑固な黒ずんだ汚れを最終的に取ったのはなにか。機械力か温度か、アルカリの液相かドライ溶液か、漂白剤かリモネンか。実はどれでもなく、意外なことにそれは「酵素」だった。
というのも一回目の洗いでは温度がかかり「アルカリ」「漂白」「リモネン」は入っていた。二回目の洗いでは「ドライ溶液」が、そして双方には機械力がかかっている。残っているものが効いたということになるので、それは酵素となるわけだ。
実は当方が使っている酵素は市販の洗剤に配合してあるものより力価(酵素の力の単位)が一桁多い。自分で配合していてなんなのだが、材料の元を一つづつ確認すると桁が多かったのである。
知ってる人が見れば「それは取れる」という声と「それも取れるのか」という声が上がりそうだが、酵素の実力は本当に侮れないものがある。