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正直、アイロンにスムーザーは「要らない」と思う

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 「スムーザー」とは、花王が販売するアイロン用シワとり剤の名称であり、正式には「キーピング スムーザー」と言って、その名の通り糊剤に位置付けられる製品である。

 で、いきなり「要らない」なんてタイトルで申し訳ないが、今回は日頃からアイロンを使っているクリーニング業者の立場から、本音を忌憚なく書かせていただきたい。

スムーザーとは何か

 キーピングの名を冠しているが、スムーザーはキーピングとは素材と用途が異なる。簡単に言えばキーピングはビニル系の化学糊、それに対してスムーザーは「ポリマー+シリコン」である。

 ここでいう「ポリマー」は熱を加えたら柔らかくなる「成形剤」(賦形剤)、「シリコン」は平坦として滑りを良くする「潤滑剤」(平滑剤)である。

 要はシリコンで生地を平たくしてアイロンの滑りを良くし、ポリマーで生地を伸ばしやすくする。これがスムーザーの役割である。具体的に言うと「シリコン」によって「アイロン離れ」がよくなることで滑りがよくなり、「ポリマー」によって生地の目が揃い安くなることによって、キレイに仕上がっている(ように見える)仕組みなのだ。

 ここまで書けば「いいじゃないか、便利じゃないか」と思われるだろう。しかし実際、日々仕事でアイロンを使っている身としてはだからこそ、要らないんじゃないかと思うわけである。

 この「要らない」と感じる理由について、私が日頃行っているクリーニングの仕事を引き合いに出して解説していきたい。

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業務用アイロンの手入れ

 クリーニング業界では、蒸気の熱だけでアイロンを温める「ヒートレスアイロン」と呼ばれるアイロンが主流である。これは温度が電気アイロンに比べ低く、生地ヤケが起こりにくいからで、トラブル防止の側面が強い。

 実は生地によって適正温度に違いがあり、大まかにいうと綿麻は高く、毛絹や化学繊維系は低い。中にはポリウレタンやポリ塩化ビニールのようにダメという生地もある。本当は生地毎に設定温度を変えるためアイロンに「下駄」を履かせて仕上げするのが理想的なのだろうが、価格的に見ても、それをするような値段ではないので、殆ど行われてはいない。

 アイロンは使っていくうちに、糊や仕上げ剤等がアイロン表面に蓄積していき滑りが悪くなる。そこで研磨剤を用いて蓄積した汚れを取り除く。

研磨剤「ピカール」

汚れが蓄積したアイロン

 研磨剤を雑巾などにつけてアイロンを磨く。このときアイロンは熱したままで行う。

研磨剤を雑巾につける

研磨したあと。これだけ汚れが付着している

 研磨すると雑巾は黒く汚れる。これが焼けた糊などである。ただ、研磨しただけでは使えない。ここにシリコンオイルを付着させなければならない。

シリコンオイル

 このシリコンオイル、「スムーザー」で使われている「シリコン」と分子量が違うが同じ役割を果たしている。アイロンに薄い膜を張り、生地の直接の付着を防いでいる。これによってアイロンの生地離れがよくなり、結果として滑りがよくなる。

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家庭用アイロン

 ただ家庭用アイロンではこうした「磨き」は行えるアイロンは少ない。なぜならアイロンの滑りを良くするため、殆どのアイロンに「テフロン加工」などが施されているからである。「など」としているのはいくつかの種類があるからだが、総称して「テフロン加工」で通る。

 このテフロン加工、フライパンや鍋に施されているものと同じもので、生地の直接の付着を防ぐものだが、熱や傷によって使っていく間に剥がれていきボロボロになっていく弱点がある。そのため研磨剤は使えない。

 ただ個体か液体のアイロン用汚れ落とし剤があるのでこれで代用できる。この汚れ落とし剤で汚れを取った後、シリコンオイルを塗れば先程書いた業務用アイロンの手入れと同じような効果が得られる。

 シリコンオイルに関しては色々なシーンで使える「シリコンスプレー」でも代用できるので、これを備えて使えばいいだろう。最後は乾いた雑巾で拭き取り、これを使ってアイロンをかければよい。

 そうすればスムーザー以上に余裕でアイロンは滑るだろう。

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スムーザーが要らない本当のワケ

 スムーザーの正体についてハッキリと書くと極薄の「ポリマー+シリコン」である。濃いと輪ジミのリスクが高まるのとコストがかかるので入れられないのだ。

 加えていうとポリマー樹脂の中でも比較的分子量が小さいものを使っているため、成形能力が低い事が挙げられる。これは大きくすれば比重も大きくなって分離しやすくなり、ダマや輪ジミの原因になってしまうからである。

 故に「アイロンを滑りやすくする」旨の目的「のみ」でスムーザーを使っているというのなら、家庭用アイロンの手入れのみでそれ以上のメリットが得られるというわけなのだ。

 本来「ポリマー」は「成形剤」であり、スプレーではなく、濯ぎ時に入れるのがベターなものである。それにスプレーで効かせるためにはもっと分子量が大きいものでないといけない。

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アイロンの使い方

 それに加え、もっと問題なのはアイロンの意味が知られていないことである。究極言ってしまえば、アイロンの使い方が間違っているのにスムーザーもなにもあったものではないよね、ということだ。

 アイロンの仕上げ方は「滑らせる」ものではない。「押し付ける」ものだ。生地面の「横」に力をかけるのではなく「下」に力をかけなければ仕上がらないからで、横に力を逃したって「プレス」になんかならないのである。

 実は当方の作業場でもそれを散々言っているのだが、なかなか理解できていない。ハナっから「滑らせる」ものだと思ってしまってるからで、滑らせて「シワが伸ばせない」と言われても、当たり前だとしか言いようがない。

 滑っているようにみえるのは、下に力を入れながら「浮かせて」移動させているからに他ならない。一日に数百点を仕上げすると本当に握力がなくなってしまう。それを長くやっていると指が曲がってしまって固着してしまうくらいなのだ。

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おわりに

 「スムーザー」を愛用しているユーザーや製造されている「花王」さんにとっても大変手厳しいことを書いているので、不快な思いをされた方がおられるかもしれない。しかし本当のことを書くには厳しくならざる得ないのが実情だ。

 家庭での仕上げ環境は貧弱で、それを補う製品として「スムーザー」があるのだが、それを使わなくともスムーザー以上の効果を得られる方法について書いたつもりである。

 ただ今後、家庭ではこうしたアイロン使った仕上げから「アイロンレス」の時代へと舵を切っていくべきだとの考えから記事した次第である。こうした話が何かの機会に役に立てば幸いだと思い、この話を終わりとしたい。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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