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当方のドライと水洗の比率の推移

投稿日:2017-05-14 更新日:

 創業より四半世紀。長らく一般クリーニング業を営んできた当方の歩みは、当方の経営基盤の弱さを反映してクリーニング業界の変遷、日本の社会構造の変化を投影したものになっている。面白みのある話ではないかもしれないが、当サイト内のクリーニング情報とリンクしているので書き記すこととする。

売りはクィック、水洗い、Yシャツ立体

 私は親からの事業継承ではなく、新規で立ち上げた参入業者だったため、他店との差別化を図るべく、クィック(当日仕上げ)、水洗い(ドライマーク衣料の積極的な水洗)、そしてYシャツの立体化を進めた。

 Yシャツの立体化はバブル時代の人材不足を補うため、機械仕上げの状態のままお返しする代わりに料金をお下げするというもので、私自身組みしたアイディアだった。

 クィックは平日までは行なう業者がいたが、肝心の土曜→日曜仕上げを取り組む業者がいなかったため、日曜稼働でこれを売りにした。

 そして水洗いはポリエステル、アクリル、綿麻製品の水洗化を強め、ドライ系衣料であっても水洗い(水に落とす、という)をしみ抜きの延長線上で行なうというものだった。

 これらが功を奏したのか、次年度は初年度の倍、その次の年度は初年度の三倍、その翌年には初年度の四倍の売上を上げることが出来た。

 当時の記録を見ると大体ドライ40%、ウェット(水洗い)25%、Yシャツ35%というもので、一般のクリーニング業者に比べ水洗比が高かった。

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売上の推移の悪化

 立ち上がりこそ比較的堅調な滑り出しを見せた当方だったが、自己資本ゼロから行ったことが次第に足かせとなっていった。売上を上げても設備投資の払いに消えていったのである。そこへ今世紀に入ってからの業界的な停滞は我々にものしかかり、売上は減少に転ずる。

 この状況に対し、当方は「新規販路を拓く」「宅配サービス」そして「コストダウン」の3つの取り組みを行わざる得なかった。新規販路は外商部門の強化で、当時2%だった売上が8%に増えた。宅配サービスはゼロから5%と、外回り営業での売上が増加した。ところが主力の店舗部門の売上下落は止まらず、穴埋めをしている形となってしまう。

 コストカットについては、様々なサービスの見直しを行い、特にコスト圧迫要因の一つクィックサービスの時間帯を短くして対処するなどを行い、人件費を圧縮。資材卸業者とのやり取りで未払金の支払いを求められ、払えないのはこちらの努力不足と言われたのを名分に、各製造元との取引を行って資材の仕入れ価格を半減させた。卸業者の売上は80万からゼロとなった。 

 また水洗処理をすることによる手間によって生じる人件費を抑制すべく、今度は水洗のドライ化を推し進め、比率はドライ50%、ウエット15%と変化する。また衣料をドライに回したため、コストカットの費用の一部を高額資材購入に充て、ドライ溶剤管理とソープ研究を本格化させ、状況に対応させた。

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路面店の下がりが止まらない

 店舗の売上下落が止まらない。これを店舗要員の工場での共有化によって人件費抑制で対応する。外商部門の引き合いが徐々に増え、やがて外商と宅配で売上の3割を占めるようになった。このころになると店舗の不信を外商が補う構造が慢性化してしまう。

 工場部門ではコストダウン研究をすすめ、高い資材を少なく使う研究を行い、洗剤が効く効かないの境界線をみつけ、従来の半分から三分の一の間まで減らすことができる点を見つけ出した。

 また営業部門での皮革クリーニングや布団クリーニング、ダウン営業の強化などを行ったりした。しかし一般クリーニングの需要減は誰が見ても明らかになっていた。 

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経営戦略の転換

 店舗の不信を尻目に外商部門の引き合いが続く。新規の引き合いや廃業する複数のクリーニング事業者から仕事の継承を行なうなどしたことで、売上の半数が外商で占められるようになる。この比率の変化によって、ドライの率が大きく低下、ドライ20%、ウエット15%、25%白衣等、40%Yシャツと、水洗率が大きく増えた。

 これを受け、白衣等の仕上げ機や大型水洗機を廃業する業者から引き取って増設、場所がないので従来のドライ設備や水洗設備の大半を出した。1000万以上の高額機械を出し、古い設備を入れたのである。当然、懐疑や反対する声があったが、それは押し切った。

 使われぬというのは時代が変わった証であり、それを後生大事に持っていても、事業が継続できなければ意味がない、と解いてねじ伏せたのだ。事実、ドライが無いのに大型ドライ機を持っていても仕方がなかった。当方は新しい設備から過去の設備に設備替えをする判断を下した。

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一般需要の減少

 順調に増加した外商部門だが、全てが増となっていた訳ではない。宅配クリーニングは店舗と同じく売上減の傾向を辿っていた。要は一般クリーニング需要そのものが失われつつあったのだ。創業当時多くいた週一回スーツ上下とYシャツ5点出すといったサラリーマン層の過半が失われ、従来多くの服を出していた層は高齢化によって外出が少なくなりクリーニングを出す動機がなくなっていた。

 代わりに登場したのはドライクリーニングを必要としないカジュアルな服を着る若年層だった。我が国は気がつけば分厚い中間層が失われていたのである。ホームクリーニング業界の売上は1992年(平成4年)をピークに減り続け、とうとう半分となってしまった。

 そして当方の売上比率は外商70%、店舗30%と外商依存が加速。企業として店舗営業の必要性を考えなければならない状態となってきた。

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局面展開と店舗撤退

 そんな折、ある仕事を請け負うことになった。高層マンションのコンシェルジュのクリーニング業務である。半年ほどの限定業務だったが、そこには一定のクリーニング需要があった。従来では見られないような業界需要の傾きが起こっていたことに気付かされたのである。

 路面店に客は返ってこない。もう一店舗集中型で客が取れる時代ではなくなっていた。薄く広く顧客を取らなくてはならない。そのためには投資をし続ける体力とマンパワーが必要だが当方にはその両方がなかった。

 これを見た私は全店舗の撤退の決断を下すに至ったのである。見ることが出来たから判断を下せたと言うべきだろう。不安の声も少なからずあったが、売上が更に下がり身動きが取れなくなるだろう2年後より、今動く判断をしたのだ。

 折よく店舗と工場で複数人が仕事を辞めたいとの申し出があったので、大なたを振るう好機を得、事業譲渡の申し出があった1店舗を除く全店舗を閉店し、店舗事業から撤退した。

 当方は売上の三分の一は落としたが、展望の見えない路面店から堅調に推移する外商部門に完全にシフトすることとなったのである。一般顧客向けの窓口がなくなったことで、当方の被洗物の割合は大きく変化。Yシャツ30%、白衣等30%、ウェット25%、寝具等10%と水洗系が9割以上に達し、ドライはわずか5%を占めるのみとなり、文字通りドライの時代が終わりつつあることを示すような数字となった。

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おわりに

 店舗を撤退した当方は、外商部門のみとなったが、幸いなことに仕事の引き合いが複数あって、店舗分を全て埋める訳ではないが売上は堅調に増加している。一方店舗の営業サービスのため20年以上週7日だった私の出勤も日曜祝日等は仕事が非稼働のため休みとなった。

 動かしては損失となる、そんな時代が来てしまっていた。仕事をより効率に行わなければ黒字もすぐに赤字化してしまうようになり、従来のような肉弾戦は乗り切れなくなってしまっている。

 従業員の勤務時間を厳守して休みを多く渡し、会社の出費を抑える経営を行っていかなくてはならない時代。社会が萎縮しているなかで生きていくためには仕方がないのかもしれない。だが、それでも我々は生きていかなければならないのである。

 

 

 

 

 

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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