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市販の「消臭剤」が効かないのは本当なのか?

投稿日:2017-07-14 更新日:

 「市販の消臭剤では効かない」として、「効く」消臭剤を売り込む宣伝サイトや商品販売を行っている業者がいる。実際、ネット上において一部のユーザーから、市販の消臭剤では満足できないので「効く消臭剤」を教えてほしい、との要望が散見される。

 ここに「普通の消臭剤」では飽き足らないユーザー向けに、様々な業者が「消臭剤」に参入する素地があり、多くのバリエーションの消臭剤が販売されている因がある。

 ただ「「効く」以上に大切な事。衣料用消臭剤の選び方」で触れているように「効き」を求めるあまり、その用途の特性をあまり見ていないようなケースが少なからずある。これは消臭剤の性能評価を「効き」だけで判定することの難しさを示すものだ。

 つまり「効き」以上に「用途」や「安全性」が要素として重要なウェイトを占めているということであり、このような点を踏まえた上で、衣料用消臭剤を卸している当方の観点から、ネット上で論評されている「消臭剤」の能力評価の是非について論評したい。

「香料」使用は本当にまやかしか?

 よく消臭剤関連の評価サイトや販売サイトを見ると「多くの消臭剤は香料の臭いを被せているだけなので、臭いの根本的な解決にはなりません」旨の説明が書かれている。

 これは半分は正しい。香料の臭いを被せていることについて、臭いの原因物質に対してなんら対処を行っていないのは「事実」であり正しいのだ。しかし半分は間違っている。なぜならば臭いの根本的解決法はその除去しかなく、衣料繊維に限って言えば「洗浄」以外の方法はないからだ。

 つまり「香料の被せ」という方法を否定したつもりが、全「消臭剤」、自身が推す消臭剤も含めた消臭剤の意義そのものを否定している事に、発信者が全く気づいていないのだ。衣料・繊維用途という視点で見たとき「消臭剤」は「洗浄」の代償手段ですらならないのである。

 この点は一番重要なことで、その上で「消臭剤」の意義を訴えることによって、ほんとうの意味ではじめて必要性が認知されていくのではないかと思う。「香料」使用がまやかしなのではなく、その使用を否定するほうが「まやかし」なのだ。

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最も無難な方法は「香料」

 実は香料を用いる方法は最もリスクが少なく、安全性が高い方法である。というのも化学的反応を起こすわけでもなく、何らかの生物的方法でニオイ物質に対し作用させる訳でもないからだ。つまりニュートラルであるからこそ「安心」「安全」そして「無難」なのである。

 強い臭いを重ねることで悪臭を感じさせないようにする方法を「マスキング」という。この手法は「感覚的脱臭技術」の一つで、「香水」や「香木」「香道」「匂い袋」といったように古来から用いられてきた方法でもある。

 古くから行われていることによって知識情報の集積が最も多く、体験的なあるいは経験則が最も充実している技術ともいえよう。だからこそ長く用いられてきた方法であり、それゆえに「安全」で「安全」なのだ。

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「香料」による消臭の弱点

 しかし一方問題もあり、前出の「臭いの原因物質への根本的解決法にばらない」点はもちろんのこと、人間の感覚的なものによる方法である故、同じ方法を用いても受け手によって大きな差が出るという部分が大きな欠陥だろう。

 ある人にとっては良い香りであろうとも、別の人にとっては気分の悪い臭い(つまり悪臭)と感じられるケースはままある。香水の香りなどもそうであり、最近であれば強力な臭いを放つ海外製品の柔軟剤が「香害」と揶揄される部分などはまさにそれが当てはまる。

 その香りが好きな人にとっては問題がなくとも、強力な臭いが苦手な人にとっては「香害」は大きな脅威である。その人々にとっては、その強力な臭い自体が「害」であり、「消臭」の対象で、中にはその臭いを消す方法を探している人もいるくらいだ。

 ただ衣料的、あるいは繊維的にみれば服にダメージがゼロという時点で「問題がない」わけで、最終的には人の感覚次第であるというのが、この「香料」を使った消臭(厚生省的には「脱臭」)なのである。

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市販品の消臭剤の成分は「香料」だけではない

 勘違いされている人もいるかもしれないが、市販の消臭剤は「香料」のみで構成されている訳ではない。むしろ「香料」は成分的に最も少ない量が配合されている。香料はだいたい一滴程度で十分効くので、分量として少ないのは当たり前なのだ。

 他に入っているのは「企業秘密」であるというのが、この消臭剤などの世界のお約束で、何が入っているのかは同業者は大体検討がつくものの、それには触れないという暗黙のルールみたいなものがある。

 その代わり無茶な量(身体に影響を及ぼすレベルで、または価格的な意味合いで)を配合しないような決まりごとのようなものがあるのか、大体無難な内容に収めているように感じる。これは厚生省の通達が相応に効いているのかもしれない。

 では「秘密」の中、具体的にどんな作用の物が入っているのかといえば一つは「結合」、もう一つは「抗菌」という作用を持っている資材だ。

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「結合」と「抗菌」

 「結合」は浮遊したり物に付着している「ニオイ物質」にくっついて臭いを封じるという化学的脱臭技術の一つである。判りにくい概念の為、ニオイ物質を取り囲む図であったり、分子が大きくなって床に落ちるイメージで宣伝されているものだ。

 事実のようにも見えるが、誰も本当にその姿を確認したものはいない。しかし「結合」自体は研究で明らかになっており、かつ効能も確認されているので、これ自体嘘とは言えない。

 一方「抗菌」の方だが、こちらは簡単で臭いを発生させる雑菌などを繁殖させないようにする物質を噴霧し、雑菌を封じて臭いを抑えるもので生物的脱臭技術に属する。これは「除菌」や「抗菌」の技術転用で、消臭剤の中に極薄に配合させることで効果と安全性を両立させている形となっている。

 この2つの作用を果たす成分が消臭剤に入っているが、その資材は効きはよいもののイニシャルが高く、市販品は配合方法と分量で調整して市場へ流通させることができる価格で製品化している。

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おわりに

 このように市販品は市場で流通させるのに問題が起こりにくいレベルで、総和的かつ求めやすい価格に設定されており、効く範囲というのも自ずと決まってくる。

 一方でそれが効かないからとネット上で販売されているものが「効く」のかと言えば必ずしもそうではない。「消臭剤」の性能は「効く」だけが全てではなく、低濃度かつ少量で効くのが理想的であり、それを達成したものが本物と言えよう。

 しかし現実問題、何が適性で何が本物であるかを見抜くのは並大抵のことではなく、特に「消臭剤」に関しては難しい面があるのは事実である。ただ私から言えることは「衣料繊維用途」の消臭剤は「中性」でなければならないということ、これはハッキリと言える。

 実は他にも幾つかあるのだが、それはまた別の機会に触れたいと思う。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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