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家庭でできる「よい洗い」を考え抜く 3

投稿日:2017-05-10 更新日:

 「よい洗い」洗いとは何か?と問われれば、一般的には「汚れ落としの可否」だろう。汚れをより落とす洗いが「よい洗い」だと。これが一般的なクリーニング業者ならば、先ずは「トラブルなき洗い」が「よい洗い」だろう。万が一何かあれば、即補償問題である。だから業者にとってれが防がれることこそ「よい洗い」なのだ。
 リスクを取らない洗いは安全な一方、汚れ落としという点では当然ながら不満足な部分が出るのは致し方がない。私は他との差別化を図るためリスクを取る洗い方をしてきた為、トラブルに見舞われることも少なからずあったが、反面色々な事を学ぶことができた。
 で最近、私は「よい洗い」とは何かと考えるとき、水洗いにせよドライクリーニングにせよ「よいすすぎ」ではないかと思うようになった。しっかりした洗い(クリーニング業者的な意味での汚れ落とし)ができなければ、よいすすぎ(仕上剤を効かせる)ができないのではないかと。

クリーニング業者的な意味での汚れ落とし

 これは目に見える部分のシミではなく、繊維内の汚れである。洗い場に立ってる人なら触ればわかる。ドテッとかヌルってしているのは繊維内の汚れが取れてないもの、サラッとかツルッとしているのが取れているもの。何よりも服が軽い。であるから、見えるシミ云々は二義的なものだろう。
 ここらは一般的な方には判りにくいかもしれないが、「しみ抜き屋」と「クリーニング屋」は別物で、しみ抜き屋は単独の「しみ抜き屋」、クリーニング屋は「洗い屋」で設備もやっている業務内容も仕事のこなし方も全く違う。クリーニング屋と「仕上げ屋」も違うクリーニング屋の仕上げは基本シワ伸ばしなのに対し、仕上げ屋は「売り物仕上」、成形である。
 こんな話を書けばキリがない(売れないが本が書けるレベルで)ので割愛するが、クリーニング屋とは「衣服を着用レベルに洗う仕事」なので、そういう意味で「しみ抜き屋」や「仕上げ屋」とは違うのである。「洗い屋(洗濯屋)」とは、衣服の風合いを出来る限り変えない範囲の中で洗いで取れる範囲の汚れを落とす仕事なのだ。

 繊維内の汚れが落ちていれば、例えシミが残っていようと素材の風合いを戻しやすくなる。シミは別の手立て(最悪しみ抜き屋)でも取れるが、風合いが戻せないレベルで処理を行えば取り返しがつかない。例えばシミを取るため5、6万のアセテートのニットなんかをドライマーク洗剤で洗ってしまいました、なんて言われても手がつけられない(伸びたものは戻せないし、風合いも不可能)訳で、そこまでして落とさなきゃいけないものなのか、と最近つとに思う。だから素材に合わせた洗いで繊維の汚れを落とすことを第一に考えるべきなのだ。

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「よいすすぎ」とは洗剤なき「すすぎ」

 様々な手立てを尽くして洗浄力を上げ、その上で洗剤を減らした洗いを行なうと、すすぎに入ったとき、実はすすぎが終わっている。なぜなら除くべき洗剤そのものが、従来に比べ洗剤が大幅になくなった状態ですすぎに入っているのだから。これを学生に例えるならば、予習復習を行った状態で授業入りをしているのに等しく、していない人の差はこの時点で歴然としている。
 本来すすぎとは「ソープ濃度を落とすこと」が主目的であり、被洗物に残っている洗剤成分を水で薄めることである。ところが洗剤を大幅に減らした上、脱水前に排水をし最低水位での予備すすぎを行うと、これで実質すすぎ一回目状態になってしまうのだ。こうした状況下ですすぎながら最終洗いと被洗物の仕上げの段取りを行なう。
 最終洗い?仕上げ?と疑問を持たれるかもしれない。最終洗いとはクエン酸の投入である。洗いの絞りを甘くして洗剤のアルカリ性が弱く残っている状態で、酸性のクエン酸を投入することで弱い中和反応が起こり、繊維が軽く白化する。これで最終的にアルカリの反応を止める。
 仕上げの方は、これは家庭洗濯でも行われている「柔軟剤」の投入と同じである。ただ私のところの場合柔軟剤も「仕上剤」の一つで、素材、状況等によって複数使いを行っている。

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ウェットクリーニングの仕上剤

 「洗い之仕上げ」は私のお世話になった業界古老の言葉で「洗いの時点で仕上げが始まる」という意味である。洗いの段階で仕上げの事まで考えろ、とか洗い自体が仕上げの意とか、色々解釈ができるが、私の場合、半世紀仕事に携わってようやくわかり始めたかな、という段階である。
 洗いによって汚れを落とすことと引き換えに、服は摩擦によって帯電し、油膜を除かれた繊維のコンディションは変わる。これを整える役割が「仕上剤」で、「柔軟剤」もその一つである。当方の場合、主な仕上剤は

・柔軟剤
・綿麻仕上剤
・動物性繊維仕上剤
・水溶性ポリマー
・帯電防止剤

 これにあと四種類あるが、ごく少量(1~3cc)程度なので割愛する。なんでこんなに持っているのか?といえば繊維の素材や番手によって効く材料が違うんですよ、これが。
 例えばYシャツにハリを持たせるためには糊を持っていくが、ゴワゴワになりやすいんで、シワを容易に伸ばせるように綿麻仕上剤を加え、ツルンとさせるために更に別の仕上剤(化粧品に入ってる成分を1cc)入れたり、番手の厚い綿タオルやアクリル、ポリ系ならば柔軟剤と帯電防止剤、毛やらシルクを水洗したなら動物性繊維仕上剤と水溶性ポリマー。こんな具合である。
 これに場合によっては色素回復剤(綿麻)やら、抗菌剤を加える。あとダウンならば生地を傷めないため乾燥促進剤なんかも入れたりと、よその業者さんから「魔改造」とか、「よくそんなもの」(価格的な意味で)と言われましたが、コストを下げつつ効率的な仕事をするためにこういう仕上材体系となったのだ。

 例に書いているように、例えば柔軟剤は綿麻や毛、シルク等への効果は薄い。薄いものに投入するのが「無駄」なのである。逆に高価な綿麻仕上剤や動物性繊維仕上剤をポリ、アクリルに投入するのは無駄。全てきちんと合わせて投入すればごく少量となり、結果として高価な資材のコストのヘッジが可能となる

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おわりに

 「よい洗い」とは洗った段階で、一回目のすすぎが最終工程となるようにソープ量を激減させることであり、「よいすすぎ」とはそれによって作られる「仕上剤が投入できる環境」である。いわゆる見える取れない「シミ」を落とすことを主眼にするより、こちらの方が重要な話である。なぜなら洗いは被洗物の「総和」であって、単独の「シミ」に合わせるものではないからである。
 「シミ」はあくまでそのシミで対応するのが一番の近道で、シミへのこだわりは洗いの本質から逸れる話なのだ。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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