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介護保険は実質的に機能麻痺する未来しかない

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 2000年(平成12年)に始まった介護保険制度は「介護保険法」に基いて始まった社会保険制度である。この制度は高齢化社会を見据え、それまで行政措置で行われていたものを、介護保険という新たな保険制度で対処しようというものであった。

 しかし今、その介護保険制度の中、介護施設で窃盗、虐待はおろか傷害や殺人という最悪の結果に至るケースも発生し、介護の現場は施設職員にとっても利用者にとっても劣悪な環境に置かれつつあることが明るみとなっている。

 週刊現代では自身もデイサービス経営に携わっていたというルポライターの中村淳彦氏が介護の現場の危機的状況について断続的に記事を寄せており、最近では「老人は捨て、若者は奴隷に…日本の介護の「さらなる絶望」」「現役世代を使い潰す日本の介護制度は、もはや完全に失敗している」という記事を掲載しており、非常に厳しい介護の現状の詳細をルポしている。

最初から「不幸」は決まっていた

 こんなことを書いたら申し訳ない事だが、実は日本の「介護保険」は1997年(平成9年)に誕生した瞬間から、現在のような危機的状態となることは予見されていた。

 これには理由が2つあって、まず真の出発点が「行政措置からの脱却」つまり、老人福祉問題を国から地方へ移すことを主眼に置いたものだったからである。言い方は悪いが根本的発想が「厄介払い」だったのだ。「国より近い行政体で適切な介護を」とは聞こえが良いが、現実はそんなものである。

 あともう一つは介護保険制度をドイツの制度を参考としたものだったことだ。というのもこのときドイツでは介護保険だけでは賄いきれないとして、「介護「補助」保険」制度が議論されていたのである。これは連日、各州各自治体で賛成反対の議論が連日行われ続け、その模様はドイツ国内で毎日放送されていた。

 この当時のドイツで行われていた議論とは「介護補助保険」が必要かどうかであり、必要だと唱える人は介護保険の限界を訴え、必要ないという人は個人で賄うべきとの主張を繰り広げていた。双方「介護保険」だけでは限界がある事を共通認識として共有した上での議論だった。 

 にも関わらず、半ば機能不全に陥っていたこの制度を日本に持ち込んだのだ。政府も政治家もメディアもドイツの現実には目を瞑ったままだった。瞑った上で「介護保険法」を成立させ「介護保険」をスタートさせた。機能不全になることは最初から分かりきっていたのである。

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逃れられぬ介護保険制度のスパイラル

 このように非常に受け身の制度としてスタートを切った介護保険制度であるゆえに、問題点が次々に露呈する。介護保険の適用者が増えるにつれて「要介護認定」の基準が改定され、事業者に支払われる費用は削減されていく。

 サービスを維持するしわ寄せを国が負うことはなく、介護事業者にツケは回ってくる。事業者はそのツケを置いたくないので、従事者にそのツケを回していくしかない。そして介護従事者の仕事量は増え、報酬を減らされるという大きなジレンマに陥っていくのである。

 しかし結局のところ、最後の最後にはそのツケは利用者に回していくよりほかはなくなる。その一端が傷害や殺人という形となって現れてくるのだ。

 根本問題として、増えない徴収金額の中、利用者だけが増え続けるのに「サービス」を維持しようという罰ゲームを始めた時点で負けしかない。

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もはやゼニカネの問題ではない

 ではお金を積んだら解決すると思ったら大間違いで、実は「人手はない」ことが最大問題なのである。つまりお金を積んでも、サービスを維持するだけの「人手」がいないのだ。

 我が国は超高齢化社会を迎え、このままでは10年後には3人に1人が65歳以上、40年後には2人に1人が75歳以上の高齢者となる。これまでとは桁違いの高齢者社会になるわけで、お金を積んだだけでは「介護」が受けられない時代が到来する可能性が極めて高い。

 いくらお金を積んでも介護する人自体がいなければ、介護を受けることもできなくなるのは当たり前の話だからである。だから「ゼニカネ」の問題を越えたところに、この介護保険制度の問題はある。

 このような状態では介護を受けられる人というのは、相応のお金の出せる人であることはもちろんのこと、社会的ステータスの高さが必須となってくるだろう。つまりカネとコネがなければ介護は受けられない社会となる事は容易に想像がつく。

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解決法があるのか?

 「ある」と言えばあるのかもしれない。この根本的な問題は介護利用者の果てしない増加にあるわけで、この利用者数を抑制すれば体裁は取れるだろう。現実問題、要介護認定の低い人のサービスを実質的に打ち切るプランが検討されている。

 だがそれはあくまで机上の話でしかなく、現実には街に要介護者を溢れさせるだけにしかならず、高い要介護認定を勝ち取るために傷害まがいの事が起こってもおかしくない。

 そもそも介護保険は役所のアリバイ作りから入っているような制度であり、解決したように取り繕うように装うことに終止する以外に官僚の手立てはないのである。これを解決法だとしたら「ある」とは言えるだろうが、誰もそれを解決法とは言わないだろう。

 では他に方法はと言えば、多くの国民が憂いるべき現状を知り、共通認識を持った上で、可能な方法について広くコンセンサスを得るというのものがある。

 これは介護を一つのリソースと捉え、徹底した施設側の負担低減と徹底した利用者個人の責任を行い、現場の消耗を最小限度に抑制し、持てる能力をフルに活かすという方法だ。しかしこれを実現するためには政府が真剣に考えることと全国民の物心両面の支持支援が必要となり、実現するにしても苦難の道のりが想定される。

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おわりに

 なかなかハードな内容だが「介護」と遭遇する可能性は誰しもあるわけで、日頃よりある程度考えておくことは決して無にはならないだろう。

 この問題に非力な我々がどう向かっていけばいいのかについては、またの機会に改めて考えてみたい。

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  1. Mugu より:

    中村敦彦の中年童貞への怨念は相変わらず凄まじいな。
    中年童貞はこれらの因果に一切関係がないというに。

  2. vivente より:

    事業に失敗を特定個人に負わせるような問題ではないんですが、どうしても私怨が先に来るんでしょうね。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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