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今後の日本におけるドライクリーニングの展望 2

投稿日:2017-05-14 更新日:

 前回は日本のドライクリーニングの変遷を紐解いて、現在のクリーニング業界を取り巻く環境について書いたが、今回は家庭における洗濯関連機器を通してドライクリーニングの未来について考えていきたい。

2016年の衝撃

 昨年、家電業界で二つの洗濯関連機器が発売され話題を呼んだ。かたやアメリカ、かたや韓国。そこには日本の姿はどこにもなかった。

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衣服再生消臭機「SWASH」

 古参業者ならみんな知っている米洗濯機メーカー「Whirlpool(ワールプール)」と、ご存知米洗剤大手「P&G」が共同開発した洗濯関連機器「SWASH」。「P&G」が出すキットを機器の上部にセットして収納すると、十分程度で密閉された機器の中で消臭とスチームによるシワ伸ばしが行えるという商品である。

 価格は1台399ドル、今のレートで4万円台。キットは一ダース入り7ドル。

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ホームクリーニング機「LG Styler」

 もう一つは韓国家電大手LGが出した洗濯関連機器「LG Styler」。こちらの方は下部に水をセットし、その蒸気とハンガーをかけるバーの振動で汚れ落としとシワ伸ばしを行なうというものだ。

 また高温スチームによる除菌を売りにしているのはLGが以前より出していた機器と同じだが、従来の半分程度の大きさというスリムでコンパクトな作りになっている点が新しい。機器内は二着掛けだが、ドア部分がズボンプレスとなっている。また下部には蒸気を作るための給水タンクと蒸気使用後の水を貯める排水タンクが配置されており合理的に作られている。

 仕上がりの標準時間は48分、価格は228,000円(税別)

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二つの機器は「洗濯機ではない」

 「SWASH」は消臭剤、「LG Styler」はスチームで除菌にアプローチしている。そして共に機器が洗浄機器ではないこと、使うことでクリーニング利用回数が減ることを強調している。

 「洗えない機械なんかダメだろう」なんて思ってはいけない。重要なのは「クリーニング利用回数が少なくなる」ことをアピールしている点だ。つまりクリーニング(この場合、ドライクリーニングのこと)の必要性自体を否定せず、かつ減らすことが出来ますよ、ということが言いたいのである。

 これが消費者心理をつくメーカー側のアプローチなのだ。ここに眼が行かなければならない。つまりクリーニングを出す間がない、出しても思ったタイミングで取りにいけない。だったらお家である程度の処理はできますよ、着られるようにできますよ、という点に需要があると見込んでいるのだ。

 これは日本とは違う両国のクリーニング事情にも理由がある。まず双方の国には日本ほどクリーニング店がないということ。特にアメリカは圧倒的に「ない」のだ。私が昔話たクリーニングオーナーは、40台の駐車場を持つクリーニング店を経営しており、受付には同時に二十人がカウンターに立つという桁外れのものだった。

 一方韓国側の方はクリーニングの生産性が日本に比べて悪いらしく、仕上がりが遅かったり店舗の運営が旧態然であるとか色々と問題を抱えている。これは韓国の機器メーカーの方から伺った話だ。つまりほしい時にないことが韓国のクリーニング利用者にとって課題のようである。世の中はやはり広い。

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二つの洗濯関連機器が登場してくる意味

 だが、日本のクリーニング事情の方がシビアだから大丈夫などと思ってはいけない。日本のクリーニング利用者の不満と米韓両メーカーの見立ては実は一致しているからである。

「ほしい時に着たい」

「動きたくない」

「家で全部できたら」

「無理して洗いたくない」

「ニオイだけでも消したい」

 等のニーズはキッチリとキャッチしているからだ。そうでなければ「ドライマークが洗える洗剤」のようなものが一定数売れる訳がない。米韓メーカー共、世界的なメーカーであり、きちんとマーケッティングを行っているのだ。

 この機器が売れるか否かは全く重要ではない。ドライクリーニングを使う回数を減らそう、あるいは使わないでいこうという流れが世界的な潮流となっている点を見逃してはいけない。つまり、その潮流の中に晒されている日本のドライクリーニング需要は益々少なくなっていく、とみるべきである。

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これからの日本のドライ事情

 とはいえ、油性落としや完全水洗不可衣料においてドライクリーニングの優位性自体は全く揺らいでいない事は事実である。ただ問題はその衣料がどれほどあるのかだ。

 実はどんどんなくなってきている。衣料はドライを使わない洗濯方法をアピールするものが増え、消費者が水に弱い繊維を以前に比べ避ける傾向が強まった。メーカー側もトラブル回避の為に以前ほどそういった繊維を使用しなくなった。日本は完全なリスクオン社会となったのだ。

 当方の業態事情「当方のドライと水洗の比率の推移」は、ある意味、業界の未来図と言っていいかもしれない。ドライ屋にこだわるか、洗濯代行業と割り切るか。人によって判断はマチマチだろうが、単純にドライは大丈夫などと言える状況はかけらもない。これから先も日本のドライ事情は茨の道だろう。

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日本の洗濯のスタイルのこれから

 これまでクリーニング店に出していた(外注化)から家で洗う(内注化)への変化、あるいはドライクリーニングが必要な服を着ない人々の拡大によって、ドライ需要は更に減っていく。そしてこの需要減による売上減少によって将来、取次店自体も閉鎖され「ドライ難民」が現れる可能性もある。

 そのとき、「SWASH」や「LG Styler」といったような洗濯関連機器が洗濯補助機器として普及していき、ドライを出すのは年二回程度という時代がやってくるのかもしれない。少なくともこれから起こる更なるドライ需要減によって、関連資材が更に値上がりし、維持できない業者が現れることも想定できる。

 それでもドライクリーニング機を握り通せば、再び「ドライ屋」なる仕事ができて、かつてのホールセールのような生き方ができるのかもしれない。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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