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プロ洗いの洗浄理論「中和」

投稿日:2017-05-05 更新日:

 家庭洗濯では資材(洗剤)の力に頼った洗濯法がメインであるが、クリーニング業界では「洗濯の三要素」の他の二つ、機械力と温度も駆使した洗濯法を行っていることは「家庭用洗剤と業務用洗剤、どちらがいいの?」記述した通りである。
 だが、それに加えて資材の化学反応を用いた洗濯法も併用している。「中和」である。今回は機械力、温度と資材(洗剤)、そしてこの「中和」のメリットとリスクについて書きたい。

機械力

 クリーニング業界では家庭に比べ大型のドラム式洗濯機を用いて洗濯を行っている。この機械で洗っている方法はくるくるとドラムが回る「回す力」で洗っているのではなく、服を持ち上げて下に落とす「叩く力」で洗っている。昔の絵にある川辺で水を浸して棍棒で叩く洗濯法を機械内で行っているのである。それゆえドラム内の被洗物の量はドラムの半分程度が理想的であり、水量もドラム下部を少し上回る程度(低水位という)の量で洗うのが基本である。
 たたき洗いは強い洗浄力を生む反面、デリケートな服を傷めたりしかねないため、そのような服を洗う場合にはドラムの水位を上げ(高水位)泳がせる洗いを行ったり、ドラム回転を弱める(ソフト回転)を行なう洗浄法を用いてダメージを与えにくいようにする。

 このように機械力は強ければ強いほど洗浄力は上がる反面、強ければ強いほど被洗物へのダメージというリスクも強まる。この感覚の調整が機械を使うキモである。

 また「洗浄時間」も重要な要素である。業務用洗剤は融解が家庭洗濯よりも遅く、一番遅い酵素などは10分近くかかって活動を本格化させたりするものだから、時間も長く設定することになる。
 長く洗えば洗浄力は高まるが、その一方被洗物へのダメージのリスクが高まり、洗浄で起こるの被洗物同士の摩擦によって、服にとって厄介な静電気が発生するため工程時間の見極めが重要な要素となる。

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温度

 水温が上がれば上がるほど、油膜が溶け、水の繊維内の浸透力が上がるため洗浄力が上がるが、生地が毛羽立ち染色が落ちやすく白けたようになりがちとなるリスクを抱える。近年では基本人肌に触れて付着した汚れがメイン(皮脂汚れと汗汚れ)のため、人間の体温に近い35度から40度程度が繊維にとっても汚れにとっても適当との考えが主流である。

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資材

 洗剤にはアルカリ性、中性、酸性とあるが、メインはアルカリ性洗剤である。皮脂汚れを溶かすアルカリ洗剤はオーソドックスで無駄がない洗いだからである。ところが近年、ファッション性の高いデザインや繊維、加工法が出るようになり、中性洗剤を軸とした洗濯方法が必要不可欠となった。

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中和

 酸とアルカリが混ざると反応が起こる。これを「中和」という。この力を使って繊維を白化させるようにする方法を用いる事がクリーニングではままある。例えば服についた黄色いシミで取れない物。「黄変」というのだが、成分が変質し「汚れ」が「染み(シミ)」となってしまったこうしたケースどうするのか?
 過炭酸ナトリウム(過炭酸)に過酸化水素水(過酸)を混ぜ、筆やら綿棒で塗るのである。これは酸性の過酸とアルカリ性の過炭酸が反応する力を利用して、塗布部分を酸素漂白する方法で、熱を使って反応を促進させたりするのであるが濃度が高いと生地の痛みや色飛びのリスクを抱えるので、素材等を勘案して行わなければならない。また動物系繊維はダメージを受けるので絶対に不可である。(但し低濃度の過酸を使い、極めて弱い中和反応で黄変抜きを行なう技術はある)最終的にはクエン酸などの酸性溶液を塗って反応を止める。

 これを応用し、水洗工程で過炭酸と過酸を入れて洗いながら反応させる洗浄法がある。遅効性の過炭酸(通常反応に20分程度かかる)に容易に反応する過酸をブチ当てるイメージである。反応自体は弱いものだが、弱い故にリスクが少ないメリットがあり、起きるのが遅い過炭酸に喝入れする(反応を促進させる)効果もある。反応を一定時間維持するために安定剤入りのものが望ましい。濃度自体は高いものでなくてもよいので、花王が出している液体ワイドハイターと粉末ワイドハイター(両方酸素系)がおすすめである。

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洗濯を取り巻く環境

 洗濯とは二律相反するものである。水で油性汚れを落とすのは難しく、油で水性汚れを落とすのは難しい。機械力が強ければ汚れが落ちやすくなるが、被洗物が痛むリスクが高まり、温度を上げれば汚れが融解しやすくなるが、これまた被洗物が痛むリスクが高まる。液相をアルカリに振れば汚れを落としやすくなるが、こちらの方も被洗物が痛むリスクが高まる。
 クリーニングとはいかに衣料を傷めずにキレイに洗えるのかをそれまでの経験に基づいて探る仕事で、どこまでリスクを取り、どこまでそれをヘッジできるかというのも仕事をする上で不可欠な要素である。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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