ドライクリーニング略史 最新情報

ドライクリーニングの歴史 8 爛熟期

投稿日:2017-07-12 更新日:

日本のクリーニング業が伸長を続けていたころ、ドイツでは行政側がドライクリーニング(=パーク)に対し、環境保護を名分とした更なる規制強化に舵を切った。具体的に言えば乾燥工程後の脱臭工程での排気量の規制と、日本以上の排水規制である。時代は確実に環境保護へと動き始めていた。

ドイツメーカーの取り組み

 ドイツの機械メーカーはこうした厳しい規制をクリアする技術を導入する一方、廃棄物量の抑制のため新たなフィルターを開発した。「スピンディスクフィルター」である。スピンディスクはナイロン製の細かなメッシュでできており、再生作業により何十回も使える新しいタイプのフィルターだった。

 スピンディスクフィルターは10~20回使った後、フィルターの汚れを洗浄し、液ごと蒸留器に入れるリフレッシュ作業を行なって、再び使用できる。結果としてカートリッジフィルターより少ない廃棄物量に抑えることができるようになっていた。

 こうした機器の導入は、環境保全のアピールと共にランニングコストの削減を狙ったものであった。伝統的に欧州のクリーニング業界はランニングコストに対し非常にシビアで、機器メーカーの新技術の多くも、そのラインに合わせたものである。

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フッ素ドライの普及

 一方パークのそうした規制を尻目に、トリオを含めたフッ素機はやがて日本のドライ機の一割を占めるほどとなり、日本のドライクリーニング機の割合は石油系65:パーク、フッ素、エタンの有機溶剤35となった。こうした潮流は日本に留まらず世界的なもので、ゾールが存在しないため日本以上にフッ素機は普及した。フッ素はそれほどクリーニング業界にとって魅力的な溶剤だった。

 というのも先の規制はパークだけではなく、エタンも同様の処置が取られていることから、フッ素以外の溶剤は全て、何らかの規制がかかっていた。フッ素にはそれがない。規制に束縛されないことからフッ素を導入するにあたって、それは大きな動機の一つとなっていた。

 安心で安全、作業性がよく光沢が出る。そして規制がない。それがフッ素の大きな魅力だった。いや、だったはずだったのだ。しかしドライ溶剤の規制は世界レベルで静かに、だが確実に進んでいた。

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Yシャツ設備の普及

 Yシャツの機器は昔は「6点プレスセット」などパーツによってプレス機を揃えて押していくものだった。それが襟カウス、スリーブ(袖)、ボデー(胴)の三点セットが主流となり、1000枚以上仕上げられるYシャツの量産仕上システムが生まれた。

 しかし、そうした機器は場所を持ち、資本力のある業者でなければできなかった。そのため限られた坪数で仕事する業者が大半だったクリーニング業界ではYシャツの仕上げ設備を持つ業者は少なかった。

 そこに登場したのがYシャツ立体仕上機「サンエース」だった。サンエースはクリーニング業者経験のあった経営者が、そのニーズを理解して作った機械で、三点セットに比べて量産性には劣るが、襟カウスと袖とボデー兼用のサンエースの二台でYシャツが仕上げられ、一坪あれば設備ができた。

 またこれまで機械を動かすのに複数人数のチームを組んで仕上げていたものを、1人で仕上げられる点がこれまでの機械との大きな違いだった。このサンエースが登場すると、業界注視の的となり展示会では人集りができ、機械が飛ぶように売れたという。

 このサンエースの登場によって、ドライとランドリーを一体運用する現在のクリーニングシステムが完成した。

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パッケージプラントの登場

 日本のクリーニング業界ではユニット店の興隆を受けて、多店舗経営を行う業者の中で新しい取り組みを行う者が現れた。それはクリーニング処理を一つの工場に集約化させず、複数の工場を作り、工場には従来よりも少ない数カ所から10数カ所程度の店をつけて、ユニット店に近い機動性のあるサービスを行う取り組みである。

 具体的に言えば、従来ともすれば看板倒れと揶揄された「朝出して夕方バッチリ」(ごめんなさい)を、システム的に可能とした小中規模の工場運営である。つまりは「クィックシステム」と呼ばれるこのシステムを軸に、一店舗辺りの売上を飛躍的に伸ばした。

 またこういったシステムに対応する高生産システムとして「Yシャツ立体化」「伝票単位管理システム」「小ロット生産方式」などを組み込んで、営業店舗が設備を持つユニット店と互角に戦えるシステムが構築されていく。

 一方複数のユニット店を経営する店の中にもこれらの動きに対応するため、大きな拠点店舗に複数店舗のYシャツを自家処理する設備を行い、Yシャツを含めた「クィックシステム」を導入する業者が現れた。奇しくも集中工場系とユニット系の業者が方向性は違えど同じベクトルに向かって動き出したのだ。

 このような「ユニット」でも「集中工場」でもない形態の運用はやがて「パッケージプラント」と呼ばれ、一つの営業形態として認識されていくようになる。一方、ユニット店の中で、比較的設備のできる業者は1人でYシャツ仕上げができる機械を導入し、これらの流れに対抗した。ただこうした流れによって、いわゆる「ランドリー屋」の多くがやがて姿を消していくことになる。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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