ドライクリーニング略史 最新情報

ドライクリーニングの歴史 6 開花期

投稿日:2017-07-06 更新日:

 レーヨンを始めとするデリケートで多様な新繊維に対応するため、日本ではパークの研究やゾールを使うなどといった方法を用いたが、石油系溶剤の使えない欧米では全く別のアプローチで対応しようとした。

新しい洗浄溶剤の登場

 1970年代、欧米ではパークとは違う特性を持つ2つの溶剤の実用化に成功し、相次いでドライクリーニングに導入された。一つはCFCー113。フッ素、フロンとも呼ばれ、無味無臭でパークのように臭いがきつくなく、ゾールのような引火性がない有機溶剤だった。

 もう一つは111ートリクロロエタン。かつてクリーニング溶剤としても使われたことのあるトリクロロエチレンが使用禁止となり、その代替溶剤として使われていたものをクリーニング溶剤に転用され、エタンと呼ばれた。こちらはフッ素と比べ臭いはあったが、フッ素と同じく引火性のない有機溶剤である。

 フッ素もエタンも引火性がないため、パークと同じように蒸留ができ、両方の溶剤ともパークやゾールに比べて沸点が低く、従来の溶剤より揮発性が高かった。これはパークより蒸気の熱量を少なくして洗うことができ、乾燥時間が短くなることを意味していた。またパークより沸点が低い(エタン87℃、フッ素47℃)ため、ドライ洗浄後の臭いの原因物質「脂肪酸」の多くがパーク以上に蒸留器に残るという強みを持っていた。

 ただ液の特性は全く逆でフッ素はゾールより低い油脂洗浄力しかないのに対し、エタンはパークを越える油脂洗浄力があり、洗い上がりはフッ素の方は光沢感が、エタンは白化作用が強くシャープな洗いだった。両溶剤とも熱心なファンがつき、業界内は活気づいたが、やはり注目されたのは沸点の低いフッ素溶剤だった。

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夢の溶剤フロン

 フッ素は洗浄力こそゾールに劣るものの、沸点の低さによって素早く乾き、素早く蒸留できるので同じ大きさのパーク機の1.5倍から2倍の生産性を誇った。また洗浄力の弱さと沸点が低いことによる液の蒸発を抑えるため、冷凍機を導入して溶剤を冷却していたおかげでマイルドにかつデリケートに洗うことができた。そのためゾールと同等の洗いができたのである。

 いいことづくめに見えるフッ素だが、幾つかの問題があった。まずは洗浄力、ゾールより劣っているため、前処理は必須とされた。次に設備の重量化。沸点が低いため、蒸発を防ぐために大型の冷却装置が必要で場所を取った。そして設備費用が高額であったことと、溶剤コストがパークの3倍、ゾールの4倍したことなどである。

 しかしそのデメリットを乗り越えられるだけの魅力がフッ素にはあった。パークの補助機としてフッ素の小型機を導入する例や、同じ場所での倍の生産性に惹かれて導入する集中工場、フッ素の小型機一本で営業する狭小ユニット店なども現れ、フッ素を導入する業者の数は年々増えていく。

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エタン溶剤

 フッ素ほどの勢いはなかったものの、パークを超える洗浄力のあるエタンは熱心なユーザーを獲得していた。特に熱心だったのは三洋電機と旭化成で三洋は機械を、旭化成は「タフクリン」という名で溶剤を販売していた。

 ただ強い洗浄力の反面、金属への腐食が強く、エタン機の周りの機械や金属が錆びやすくなるという頭のいたい問題を抱えていた。ただ白い綿のジャケットやトレンチコートなどを洗った際の洗浄力は、ドライ史上右に出るものはないほどのシャープな上がりで、一度体験すると他の溶剤では洗った気になれないほどのものだった。

 また強い油溶性と高い揮発性からドライ溶剤としてだけでなく、シミ抜き機のドライガンの溶剤として広く使用された。

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ゾール溶剤の研究

 対して日本のクリーニング業界でそれでも最大の機械導入数を誇るゾールの方も負けじと独自の動きを続けていた。各石油会社は様々な添加剤を研究し、配合したものを次々と販売していった。臭いはキツイが洗浄力を高めたものや、逆に洗浄力は落ちるものの臭いを抑えよりマイルドに洗える溶剤である。

 これは有機溶剤と違って複合成分によって成り立っている石油系溶剤の強みを活かした研究開発方法だった。また、溶剤自体がそういう成り立ちのものだったので、クリーニング業者や販売業者が高いものや安いものという複数のゾールを混ぜて調合したりする例もあった。

 また、色泣きや毛羽立ちを抑えるためにパーク同様、夏場の溶剤冷却の必要性が知られるようになりだすと、各社より溶剤冷却装置(チラー)が販売されるようになり、やがて標準装備された。また、ソープを定量投入することによって引火性の問題を低減することができるようになる事が分かると、ソープの自動投入機が装備される。

 溶剤管理の分野でも別置きのカーボンタンクが販売されるようになり、溶剤管理に熱心な業者を中心に普及が進んで、蒸留ができない部分を補う方法の研究や様々な取り組みが行われた。世界で使われないゾールは日本国内で独自の進化を遂げていった。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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