ドライクリーニング略史 最新情報

ドライクリーニングの歴史 5 雌伏期

投稿日:2017-07-04 更新日:

 様々な葛藤や対立を内包しつつも高度経済成長の風を受け、急成長を続けるクリーニング業。しかし海外から突然「待った」の声がかかった。「オイルショック」である。

業界の停滞

オイルショックを伝える新聞

 1973年(昭和48年)、中東の石油産出国が原油価格の引き上げを発表したことに端を発する石油価格の高騰は経済成長を続ける日本を直撃。国内ではガソリンはもちろんのこと、トイレットペーパーなど石油関連製品全般に渡って品不足が続いた。

 この影響はクリーニング業界にも及んだ。石油系溶剤の流通が抑制され、業界はゾール不足に陥ったのである。ゾールを使ってクリーニングを行なっていた業者は溶剤不足に悩まされ、一部の業者に至ってはシビレを切らして灯油で洗うものまで現れたという。しかし、揮発の弱い灯油では臭いが長く残ったそうである。

 クリーニング溶剤は臭いなどが残らないようにするため、乾きが早くなくてはならなった。パークにしろゾールにしろ程度に差はあるものの、高い揮発力があった。揮発が高いことがクリーニングの溶剤の必須要件だった。

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明暗

 「オイルショック」による業界内での影響は二分された。仕事ができた業者とできなかった業者に、である。パークを設備していた業者は溶剤が流通していたため影響が少なかったのだ。パークを使う業者は溶剤不足に悩む業者を尻目に変わらず仕事を続けた。

 この一件により、ゾール一本で仕事をしていた資本力のある業者を中心にパーク機を導入する動きが相次いだ。溶剤不足というリスクをヘッジする動きだった。これによって業界内のパーク機とゾール機の比率は2:8になったとされ、実質的なクリーニング処理量はパークの方が上と言われるようになった。

 高額だが洗浄乾燥機で高生産だったパーク機を集中工場やユニットといったクリーニング処理量の多い業者が設備を行なったことにより、機械比率と処理比率に大きな落差が生まれたのである。

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ユニット店の進化

 ドライ機を店舗の中心に据える、都市部を中心とする一店舗主義の潮流「ユニット店」の多くは、パークを据えていたためオイルショックの影響を大きく受けず、限られたスペースで売上を伸ばすべく、更なる運営の効率化を行なった。

 その代表的な動きは「白物の外注」でYシャツをはじめとする「ランドリー物」を「白屋」と呼ばれるYシャツ業者に委託し、店舗内での作業を減らす一方、ドライの仕上げ設備を拡充し、ドライ品の生産性を向上させた。

 ズボンプレス機や、蒸気の吹き上げ機能のある「胴パフ」「腰パフ」「袖パフ」をはじめ、スチームボックスやパンツトッパー、海外から輸入された立体成型仕上げ機(人体)などを積極的に導入しだしたのである。

 こうして資本力のある集中工場とならんで、力を蓄えたユニット業者を中心にクリーニングの機械化が進められていく。

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新フィルターシステム

珪藻土

 溶剤の清浄装置は蒸留器があったが、これはパーク機のみについているもので、それ以外にはフィルターがあり、そちらの方はパーク機にもゾール機にも付いていた。

 このフィルターはエキスパンダ方式という金属の「バネ」に濾材を挟み込む方式で、濾材には珪藻土が用いられた。珪藻土は粒子が細かく、表面積が非常に大きいので溶剤内の汚れをよく吸着するため、今もって「クリーニング最高の濾材」と言われている。

 ところがフィルター再生工程(プリコート)の煩雑さや、珪藻土のタンク内への沈殿などという管理上の問題があった。そこで海外で使われだしたのが「カートリッジフィルター」である。

フィルター

 カートリッジフィルターは金属状の筒の外周をアコーディオン状の紙で覆い、中に活性炭などを装填したもので、紙で汚れを濾し、中の濾材で色などを取ることができるようになっていた。

 また再生方法はフィルターの交換のみで済み、設備もフィルターを入れる筒だけでよく、しかも設計時にフィルターの大きさを変えることができるため、機械のコンパクト化の為に積極的に導入された。

 このため昭和50年代にはパーク機にもゾール機にも多くの機械にカートリッジフィルターが採用されることになった。

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進むパークの研究

 またオイルショックの経験から従来パークで洗いにくいとされた衣料や繊維の洗浄法の研究が進んだ。パークがドライクリーニングに使われ出された当時には「毛・絹・綿・麻」の四種類しかなかった繊維が、レーヨンをはじめキュプラ、アセテート、ナイロン、ポリエステル、アクリルなど続々と増えていったのである。

 そうした繊維をパークで洗うと、一部のものだが風合いが固くなったりした。こうしたものはゾールで洗えば問題が起こらない事が多かった。それはやはり洗浄力の強弱に依るところが大きく、パークの強い洗浄力が逆に仇となっていた。

 ヒントは別の問題の解決にあった。夏場にパークで連続洗浄をすると溶剤温度が上がって衣料が毛羽立ったり、白けたようになったりする症状が起こった。これは外気温が高く、クーリングタワーの冷却力では乾燥や蒸留の熱を冷ましきれなかったからである。

 そこで水冷式チラー(冷却装置)を導入して溶剤を冷やせば、毛羽立ちや白けといった問題が解決するばかりか、衣料をデリケートに洗えることを発見した。つまり冷却によりパークの洗浄力を落として洗えば、パークで洗うのが難しい衣料も洗えるという良好な結果を得た。しかも油脂溶解力の特性は維持された状態での結果ということで大いに期待されたが、この時は普及はしなかった。それにはある変革の波があったからだった。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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