ドライクリーニング略史 最新情報

ドライクリーニングの歴史 2 伏流期

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 東京の築地市場の移転問題に絡み、敷地内で「トリクロロエチレン」(トリクレン)が検出されたと報道された。その内容によると築地市場の敷地が戦後米軍に接収され、クリーニング工場として使われたために「トリクロロエチレン」が出たと伝えられたのである。

 しかしこのトリクロロエチレン、クリーニング業者にとって実は殆ど馴染みのないものだったのである。その理由は机上の資料に頼らずに日本のクリーニング史を紐解かなくては判らない。一体どういうことなのか?

戦後期のクリーニング設備

 日本の業務洗濯は欧米並みの本格的な普及がなされる前に戦争に突入してしまった為、ドライクリーニング伝搬以降、欧米との間にあった技術的距離を縮めることが叶わないままに戦後を迎えた。そのため日本に勝利し、進駐してきた米軍のクリーニング需要を日本の業者の力だけで賄うことができなかった。 

 そこで米軍は接収した築地でドライクリーニングのプラントを複数作って、日本の業者が受け止めきれないクリーニング需要を処理したのである。そこで使われたのは日本側から見れば戦時統制で手に入らなかった有機溶剤の「トリクロロエチレン」で、これが検出されたという訳だ。

 ドライクリーニングが洋式洗濯として高級洗濯だった時代、日本では石油系の油を使ってクリーニング処理をするのが一般的だった。ところが欧米のクリーニングは「脱石油」化し、当時の日本にとっては高価な有機溶剤を使ってのクリーニングが主流になっていたのである。つまり有機溶剤を使った洗濯は高級の上を行く最高級の洗濯方法だった。これが欧米では当たり前の話、そこには隔絶されたくらいの大きな差があった。

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「垂れ流し」の意味

 ところで当時の有機溶剤のドライクリーニング処理は今とは大きく異なり、オープン型であったと思われる。この「オープン型」を巡って、識者の間でも「垂れ流し」だと捉えている人が多いが、おそらくその人達がイメージしている「垂れ流し」とは大きく異なる。

オープン機。昔は洗うだけだった

 ここでいう「オープン型」とは、コールドマシンでタンク中の溶剤を組み上げて洗って排水し、タンクに戻すという単純な機構のものである。それに脱水機と濾過装置をつけ、乾燥は別に乾燥機を用いて行う。まずこの乾燥が「垂れ流し」に相当する。また、濾過システムが蒸留器であれば、気化した液を液化させる際、水と溶剤を分ける水分離器を通し、溶剤はタンクに戻し、水は排出する。これも「垂れ流し」である。

 そもそも有機溶剤自体が高額であり、洗ったら捨てていたなどと解釈する人間自体、想像力が欠如しているとしか言いようがない。なぜならドライクリーニングは基本、未だに溶剤を回収しながら使っているのに、それを見ずに過去は違うと解釈している方がおかしいのだ。

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欧米のクリーニングシステムの確立

 戦後、欧米のドライクリーニング事情は大きな変化を遂げる。一つはドライクリーニングに使われる溶剤がテトラクロロエチレン(パーク)という塩素系有機溶剤に変わったこと。もう一つは従来プラント型だったドライクリーニング設備が、タンクと洗浄ドラム、脱水機、溶剤清浄装置、そして乾燥機構が一つの機械となった「パッケージ機」(洗濯乾燥機)となった事である。

オープンワッシャー(洗浄機)

脱水機。昔は洗浄と脱水は別々だった

 トリクロロエチレンより脱脂力(KB値という)が弱く、沸点の高いテトラクロロエチレンに変わったのは、パークの方が扱いやすかったからだと言われている。また、プラント型から、単独機に変わったことで従来のプラント設計を飛ばして、機械を設置しただけでドライクリーニングが行えるようになった。加えて乾燥も一体化させたことにより、作業性が良くなり生産性が大いに高まる。

 またこのパッケージ機には、溶剤の引火性のなさを活かし蒸留装置を備え、更にフィルターといった溶剤清浄装置も組み込まれており、洗浄し、乾燥しながら溶剤の清浄が行えるシステムとなっていた。また乾燥工程ではエアクーラーを通して気化した溶剤を液化して回収する機構を備え、9割近い溶剤回収率でランニングコストを抑えられるようになっていた。

 「パーク」と「パッケージ機」。この2つによって世界レベルで現在至るまで続く「ドライクリーニングシステム」の基礎が確立されたのである。今から70年近く前の話であった。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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