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クリーニングの現場から見たユニクロ製品の変遷

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 先日、「これからのユニクロはベビー服と靴で勝負らしい」を書いて改めて思ったことだが、ユニクロの製品の中身、例えば「生地」などについて、実際どうなのかについては殆ど知られていないのではないかと感じる。

 よくよく考えてみれば、カジュアル製品が主力のユニクロの服は家で洗えるものが多く、それに合わせて作られるため、洗浄後の品質云々について考えられることが少なかったのではないかと思う。

 そこで今回はクリーニング視点から見たユニクロ製品の変遷を軸に、それと連動するアパレル業界の製造拠点の移り変わりとその理由について書いていこうと思う。

実は良品だったユニクロ製品

 私がクリーニング業界に入った90年代はじめには、既にユニクロ製品が出まわっていた。当時はセーターやジーンズ、デザインシャツが多かったと記憶している。ゴテゴテしたデザインが流行ったバブル時代にあってユニクロ製品はシンプルだったが、生地は強く、お値段以上の内容のものだった。

 90年代後半に入るとユニクロは商品の種類を増やした、カジュアル系のポリエステル素材のジャンパーやコート、Yシャツ等である。いずれも価格以上の品質と強さを兼ね備えたものだった。

 シンプルさと低価格、そして高品質が受けたのだろう、ユニクロの店はどんどん増えて、それに合わせてクリーニングで処理する品物も増えていった。やがて「フリース」製品の登場によって、ユニクロの地位は不動のものとなる。

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ユニクロの変化と再拡大

 私の記憶が曖昧なので申し訳ないが、2000年前後にユニクロ製品で品質表示の洗濯方法でトラブルが発生したということがあって、クリーニング業界で問題となったことがあったが、この際ユニクロ側はすぐさま対応し、業界内を驚かせたことがあった。

 なぜなら基本アパレルはクリーニング業界で問題になるようなトラブルに対応することが少なかったからである。「伸びる会社は違うなぁ」という話を何度か耳にした。

 しかし服を売るだけでは難しいと思ったのか、ユニクロが「生鮮野菜」を売ると言い始めた頃から業績が低迷したように思う。一度引っ込んだ柳井氏が社長に復帰、陣頭指揮を執ったからか業績が回復。ロゴマークが現在のものに変わった。

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新しいロゴマークから変わる品質

 その頃からユニクロ製品の素材の質が本格的に変わりだす。それまでは「綿」「麻」「毛」「ポリエステル」「ナイロン」単独素材が比較的多かったのだが、合繊の比率が上がる。

 生地の糸の番手(糸の太さと細さ)が明らかに細くなり、全体的に生地がペラペラに薄くなっていった。これを「通気性が増した」「機能性が向上した」と訴えているが、素材の品質が下がった事は明らかだった。

 ユニクロはダサいと言われた旧ロゴから著名デザイナーによる新しいロゴによってブランドイメージを確立したが、その影でもっとも「ユニクロ」らしい無骨なまでの素材品質が変化してしまったのである。

 素材の品質が変化しただけではない。生産国も変化していく。それまではユニクロといえば中国製だったものが、中国製ではないものが出回りだす。そして今日に至っては中国製のものが少数へと変わってしまったのだ。しかしそうした変化はユニクロだけではなかった。

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さまよう生産国

 21世紀に入り、日本に輸入される衣料の生産国が中国一本からアジアを中心とする様々な国に変わっていく。これは経済成長目覚ましい中国での人件費の高騰に、物価の変わらない日本での販売にその費用を上乗せすることが出来ないためであった。

 これは生産事情を無視し、上代(服の販売金額)が実質固定されてしまった状態の日本に下代(服の製造費)を合わせていくため、言葉は悪いが、日本の多くのアパレル業者が中国よりも安い賃金で作る国を探す旅に出たのである。

 当初はマレーシアやインドネシアだった生産国が、ベトナム、ミャンマー、そしてバングラデシュへと変わっていった。服を作っている国が日本からどんどんと離れた場所に変わっているのだ。

 それでも服の上代はさして変わらない。これは生産国に合わせているからではなく、日本国内の流通価格(上代)にあわせている

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「経済大国」という美名の下に

 本来、製造原価である下代に販売経費を上乗せすることによって上代が決まるはずなのだが、デフレ圧力が長くかかっている日本では、上代の固定化を行わなければすぐさま販売不振が発生するため、上代に合わせた下代で作らせることが「企業努力」と賞賛される風土が確立され、歪な経済構造を促進させてしまった。

 話は逸れるが例えばビール業界などは、美味しいビールを作って海外に売り込んでいくスタイルが正しいはずなのだが、酒税が高いことからビール販売が不振となったため、税制の隙間をついた「発泡酒」や「第三のビール」の開発にしのぎを削るという、世界の経済の流れと逸脱した競争に終始するはめとなってしまっている。

 おまけに業界では酒税法改正を緩やかにするために議連(ビールに関する国会議員の議員連盟)を介した政界工作に腐心するような有様で、業界が上を向いて歩いていけるような環境さえないのが実情。非常に内向きとなっているのだ。

 四半世紀に渡って大きな物価変動が起こっていない日本の外では物価が上がっており、以前ならば日本が容易に買えたものでも買えなくなるという買い負けが発生している。

 その結果起こったことは、以前に比べて悪い品質のものを購入したりするような有様となっている。アパレル業界ではこれが顕著で、以前に比べ良質な生地を使っている服が少く、そのような服は高価なものに限られるようになってしまった。

 つまり日本の国力は多くの人が意識しない間にどんどん落ちているのである。しかし「経済大国」の名前がその現実を見る目を曇らせているのだ。それに気づいたとき、人は一体何を思うのだろうか。

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ユニクロの綿麻混紡のシャツ

 さて話は戻ってユニクロについてである。近年販売されたであろうこのシャツの生産国は「カンボジア」。ユニクロはベトナムの奥地に製造拠点を作ったのだ。

 素材は綿53%麻47%の綿麻混紡。どうしてこんな中途半端な混紡となっているのかは定かではない。縫製に関して言えば別に問題はない。問題があるのは生地である。

 洗ったあと立体整形仕上機にかけると生地が「ベコベコ」となっている。麻入りならば整形仕上機にかけると、目が揃わなければならないのだが、そうではないということは生地に使われている糸が悪いものであるということなのだ。

 どうして悪い糸を使っているのかと言えば、下代圧力のため、良い糸(生地)が使えないためだが、技術革新によって悪い糸(生地)からでもそこそこのものを作ることができるようになったことから、下代を合わせるために使っているのだろう。

 値段と形ばかり見る消費者に生地の品質がわかるわけもなく、仮にわかったとしても金額を出さないと買えない現状では、文句の言うところはどこにもないのである。

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おわりに

 今回取り上げたユニクロの場合、販売価格以上の良質な生地を使って販売していたこともあるわけで、暴利を貪ろうとして素材品質を落としているようには見えない。

 それどころか2016年(平成28年)には値下げ圧力の強い風潮なのにも関わらず、輸入費用のかかる円安状態に対応するため値上げにも取り組んでいる。

 しかし結果は販売不振となって修正せざる得なくなっており、「決まった上代のために下代を無理矢理合わせる」風潮を押し付けているのは企業ではなく日本社会であり、日本の顧客であることは明らかだ。つまりこの件でユニクロを経営するファーストリテイリング社は何ら悪くはない。

 経済の実情に合わないものを実現させるために「無償奉仕」や「企業努力」を強いる今日の日本の現状というのは、「経済大国」「技術大国」といった自国のイメージで曲解している「夜郎自大」な人が多いという証明だろう。

 そもそも21世紀日本の技術とは「使えないものを使って売れるようにする」というニッチでチープな技術であり、それを「技術革新」だと賞賛する風潮が根付いてしまっている現状、明るい未来があるようにはとてもではないが見えない。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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