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クリーニングの「Yシャツ洗い」を完全公開 2

投稿日:2017-06-07 更新日:

 エントリー「クリーニングの「Yシャツ洗い」を完全公開 1」の後、洗いが終わりかけというところからの話となります。またこのワッシャーでは、お客様からの汚れ取りの依頼があったYシャツも入っており、その件も合わせての解説となります。

焼肉のタレが飛んだYシャツ

 Yシャツで「このシミとってほしい」との依頼あった。納品は判ってから4時間後。洗っただけで取れるだろうと判断し、汚れ落ちの可否を見るためネットに入れた。

焼肉のタレがついているYシャツ

 一般的なクリーニング業者であれば、丁寧に前処理してから洗うのだろうが、私はそれが嫌いなので洗い勝負で取ることにしている。

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洗いの時間

 当方のYシャツ洗いは25分である。これは酵素が本格的に活動するのが10分後、過炭酸が効き出すのが15分以上経ってからなので、25分としている。

 洗浄時間に関しては業界内でも多様な意見がある。というもの洗う時間が長ければ長いほど機械力と被洗物同士の摩擦によって静電気が発生するため、短時間洗浄を研究し唱えている人もいれば、やはり長く洗わないと汚れが取れないとして40分ぐらい洗う人もいる。私は酵素と過炭酸の時間を考えての時間設定なので、機械的に25分と割り切っている。

 洗いの液を簡易検査すると強いアルカリであった。このようにあの洗剤量であってもしっかりとアルカリとなっているのである。

水洗機から洗いの液を取り出した

PH10である

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洗浄終了後

 洗浄後25分が経過すれば、機械を止めて水洗機内を排水する。決して絞ってはいけない。温度をかけた洗浄では温度が高い状態での絞りは厳禁である。

洗浄25分後、44℃ある

 排水した後、今度は給水を行って、ドラム内の温度を下げる。水位は洗濯時と同じ水位である。

水の投入後、37℃になった

 温度が下がったドラム内の水のPHをチェックすると、当然ながらPH8程度まで下がっていた。

水は白濁しているがPHは下がった

色を見るとPH8

 この工程、ドラム内の温度を下げる「クールダウン」とよばれるもので、本来ならば本洗終了後、自動的に水が高水位まで投入されて、ドラム内温度を下げるのだが、私の使っている機械は「完全手動機」のため、そんな便利な機能はない。

 だが、それを逆手に取って「排水」→「給水」とすることで、クールダウンしながらドラム内のソープ濃度を効率的に下げる方法を採ることになった。何も古いことが悪いことではないのである。

 この工程は温度が下がればよいので、ここで脱水に入る。ドラム回転が高速回転になって5秒で終了させる短脱水を行う。この工程も洗いのためには重要である。

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すすぎ

 洗いと同じ中水位ですすぎを行う。この際、クエン酸を10g投入する。

クエン酸

 続いて帯電防止剤を1ml投入する。これは洗いで発生している静電気を抑え、被洗物に毛などが付着しないようにする。実は静電気による毛の付着を取るのは非常に手間でロスなのだ。

帯電防止剤、非常に高価である。

 この帯電防止剤は市販されているスプレーの帯電防止剤の原体である。帯電防止の他に防汚加工や花粉・PM2.5などの防粉塵加工などに使われる資材で、他の仕上剤と異なって「疎水性」のため、糊剤の邪魔をしないので高いが投入することにした。

すすぎ水は中性となっている

 すすぎの水は白濁せず透明で中性を示しており「中和」されている。これは本洗の絞りを甘くして薄くアルカリの液相を残し、クエン酸の投入によって生じる「中和作用」による白化を狙ってのもので、これによって「すすぎ」自体も洗いになった。

  また従来であれば高水位で2回すすぎを行っていたものが、洗いの際の洗剤量の抑制によって、通常水位という僅かな水量でしっかりしたすすぎが可能となったのである。 

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糊付け

 すすぎ工程に入ると同時に糊を作る。一度に作らず都度作って、必要な分を必要なだけ投入する。この際、綿麻仕上剤と水溶性ポリマーをそれぞれ50ml投入する。他にも化粧品基材を0.5cc投入するが、異様に高いのと市場には全く流通していないので割愛する。

 綿麻仕上剤の方はYシャツの小ジワを伸ばし仕上げ効率を上げるため、ポリマーは糊立ちのよくない綿・ポリエステル混紡品の襟袖カウスをシャキッとさせるためにそれぞれ投入する。

 投入タイミングはすすぎを7分行なった後、排水し、排水弁を閉めた後である。絞らず糊付けを2分行い、その後3分脱水を行いYシャツ洗いは終了する。

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おわりに

 これで当方のYシャツ洗いは終わった。四半世紀の試行錯誤の中で、多くの資材が入れ替わり置き換わりする中で現在の形となった。その経緯や他の一般的なクリーニング業者との工程の比較と違いなどについては、また別の機会にエントリーしたい。

 1から最後まで読んでいただければお分かりだと思うが、研究所などでは再現の難しい「日々の洗濯状況下の中で生まれた」であり、極端なことを言えば、すべての常識がひっくり返るレベルの洗いである。

 私はこれを誇示したくて公開したのではなく、節約やナチュラルを志向する前にすべきことがあるのではないか、ということが問いたかったのだ。そういうものの以前にもっと大事なことがあるはずと・・・

 当方がどの業者か宣伝もしていないような有様では技術力のアピールにもならないわけで、仮にアピールだとしても、知らないのだからお客様が来ることもない。

 お客様といえば最後になったが、焼肉のタレが飛んだYシャツがどうなったのか。

 普通に取れていた。こういう洗いを家でも可能な時代が来ていることを明言し、今回は終わりにさせていただきたい。

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Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

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