クリーニング実践編 クリーニング技術 最新情報

「スチーム仕上げ」とは一体なんなのか?

投稿日:2017-07-22 更新日:

 最近、アイロンと並んでスチーム仕上げ機が売れているという。スチームの力で簡単にシワ伸ばし、という触れこみのようだが、クリーニング業者からみればそれは正しくもあり、そうでないようにも思える。

 そもそもクリーニング屋は「洗い屋」であって「仕上げ屋」ではない。仕上げ屋とは作られた服を売り場に出すための仕上げを行う業者で、俗に「テーラー仕上げ」などと呼ばれる成形仕上げを行っている。対して我らクリーニング屋は洗った後の「シワ伸ばし」が主な仕上げ目的で、要素が全く異なる。

 が、我々の方もスチームを使い仕上げを行っているので、「スチーム仕上げ」についての説明を多少はできると思い、記事とすることにした。

スチームの特性

 スチーム=蒸気とは、圧力のかかった「気化した水=水蒸気」のことである。蒸気は圧力に応じて温度が変わったり、強い圧力を弱い圧力に変える(減圧という)と、蒸気量が増えたりと様々な特性があり、非常に広い分野で使われている。

 この蒸気、クリーニング業では仕上げ機の熱板コテの加熱、蒸留装置の熱源、乾燥機のヒーター、水洗機の温度調整など、ありとあらゆる機器に使われるが、何と言ってもアイロンを始めとする生の蒸気(生蒸という)を使う仕上機器が業者にとっても馴染み深いものだろう。

 クリーニング業で使う蒸気は仕上げ機器で使う0.8~0.4MPa程度の「高圧」蒸気と、アイロン等で使う0.3~0.2MPa程度の「低圧」蒸気という2つのラインの蒸気を使うのが一般的である。

 クリーニングなどで使われるアイロンは蒸気の熱だけで温める「ヒートレス(電熱なし)アイロン」が主流である。これは電熱にくらべ低温(140℃程度)でリスクが低いからだ。反面、綿麻など高熱が欲しい場合には、別途電熱アイロンを用いることもある。

 ちなみに「」付けとしているのは工業的には両方共「低圧」に属するからである。ちなみに家庭用スチームクリーナーの圧力は0.2MPa程度の低圧蒸気だ。

目次に戻る

スチーム仕上げ

 こうした特性を持つ「蒸気」を使って、アイロンでどうやって仕上げに用いているのかを簡潔にまとめると以下の3つである。

  • 熱板を熱する
  • 蒸らす
  • 吹き付ける

 「蒸らす」とは、蒸気を生地に比較的長く吹き付けてふやかす方法で、キツイシワなどを伸ばす際に使われる。ふやかした後は熱板で「乾かし」て、その後乾かして生地の状態を固定化させる。つまり「蒸気」はキリと同じで、「早く乾く少量の水」なのだ。

 よくスチームを吹き付けてシワを伸ばしているデモなどを見かけるが、重要なのはスチームを吹き付けた瞬間ではなく、その後の「スチーム熱を抜く」部分で、吹き付けたあと、生地の上下あるいは左右を引っ張り、その後振るなどして、素早く蒸気の熱を抜く。

 これは熱で柔らかくなった生地を伸ばした後、伸ばした状態を維持するため「冷ます」必要があるからで、実は「冷ます」工程がもっとも大事なのである。つまり熱で「伸ばした状態」をどう作り、どう冷まして「伸ばした状態」を維持するかが「仕上げ」作業といえよう。

目次に戻る

シワのあるニット

 毛100%のニットベストを例にシワ伸ばしについての説明を行いたい。 

 

洗う前のニット。クシャクシャだ

 当たり前の話だが、着用しているためシワクチャになっている。これをドライクリーニングで洗い、乾燥するとこうなる。

 

ドライクリーニング後、大分マシになった

 ご覧のようにシワは相当部分とれている。これはドライクリーニング溶液内に添加されている仕上剤と乾燥機の熱とタタキの力が大きい。

 ドライ溶液内の仕上剤とは「ハリ」「コシ」「ツヤ」「サワリ」「サエ」などそれぞれ別の資材を配合したもので、全部で11種類を入れたオリジナルブレンドだ。それでここまで伸びているので、通常のドライクリーニングだけではここまでシワは伸びない。

 ただそれでも全てのシワが消えたわけではないので、蒸気を吹き付けて蒸らす「スチームボックス」に入れて蒸気を吹き付ける。

 このようにシワは完全に伸びた。後はたたむだけで終わりである。どの素材のどのシワをどう伸ばすのか。それさえ判れば誰にでも行える作業だ。

 もう一例。レーヨン70%・ポリエステル30%のシャツのケース。

ドライクリーニング後

スチームボックス投入後

 これで終了だ。蒸気の使い方を理解しきれば、家庭でも相当に仕上げができるということだ。蒸気を吹き付ける以上に蒸気を「抜く」部分が大切ということ。これを把握するだけで全然使い方が変わってくる。

目次に戻る

おわりに

 蒸気の話や仕上げの話を書き出すとキリがないのと、わかりづらい部分があるので、とりとめもない話になるのだが、熱板(アイロン)と蒸気(スチーム)の特性の違い、使い方の違い、扱いの違いについて、少しでも理解が広がればよいのではないかと思い、少し書いてみることにしたが、正直一回書くだけではまとまりがなく、なかなか難しいというのが正直な感想である。

 一回では難しいので幾つかの例を元に、同じネタではあるが数度にわたってチャレンジする必要があるのかもしれない。実際問題、私も蒸気の様々な特性を理解するのに結構時間が必要だった。そういうことで、この話はまた別の角度から書いていきたいと思う。

にほんブログ村 その他生活ブログ 掃除・洗濯へにほんブログ村 ライフスタイルブログ シンプルライフへにほんブログ村 その他生活ブログ 片付け・収納(個人)へ

-クリーニング実践編, クリーニング技術, 最新情報
-, , ,

関連記事

シルクのカーペットを家でスイトル洗いする

 シリウス社が開発し発売した、家の掃除機に接続して使う湿式掃除機アタッチメント「スイトル」。私はこのスイトルを使って家で衣料繊維を洗える可能性について言及し、これまでスイトル用に調合したプロトタイプ洗 …

switle「スイトル」の実機レビュー1

 以前より注文していた湿式掃除アタッチメント、switle「スイトル」がようやく届いたので早速、開封することとした。 Contents1 重くない箱2 スイトル本体を付属品と繋げる3 給水タンクの構造 …

続・Yシャツ料金のホントの話

 「Yシャツ料金のホントの話」を書き終わって、改めて考えてみると他所の業界の人などからは「ホントのホントにそうなのか」と言われそうな話ばかりだな、と改めて思ってしまった。  Yシャツ料金の設定自体にあ …


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Vivente
現役クリーニング事業者。妻と二匹のネコと暮らしながら、整理術やくらし術、生活家電や機器、、著名人のなどの研究を行っている。プロフィールはこちら

    switle「スイトル」の実機レビュー1  以前より注文していた湿式掃除アタッチメント、switle「スイトル」がようやく届いたので早速、開封することとした。 Contents1 重くない箱2 スイトル本体を付属品と繋げる3 給水タンクの構造 ...

    軟水器アクアソフトAQ-S401 レビュー  エントリー「家庭用軟水器 アクアソフト AQ-S401 概要」や「アクアソフトAQ-S401、ネットの片隅で起こった異変!」で度々取り上げてきたヤマダ電機子会社の住宅機器メーカー「ハウステック」が出 ...

    家からウタマロクリーナーが消えた日  風呂場にあった「ウタマロクリーナー」のスプレー容器が消えていた。妻に「どこにやったの?」と聞いたら、「要らないから捨てた」という。まだ残っていたはずだったのにどうして捨ててしまったのか・・・・・ C ...

    switle「スイトル」の実機レビュー2  エントリー「 switle「スイトル」の実機レビュー1」では書ききれなかったスイトルの内部構造について、早速実機の写真を交えて見ていきたい。 Contents1 アクアサイクロン方式2 清水噴出部3 ...

    間違いだらけ!週刊ポストの「年金」記事  私が「年金受給が40代は70、30代は75を視野に?」を書きつつ、危惧していたことが現実となった。 怒りの徹底追及 年金は75歳までもらえなくなる 「働き方改革」に便乗した年金大改悪が年内にも閣議決 ...

    嘘だらけのネット情報。真のアクリル毛布の洗い方  家庭で使われる毛布の中でアクリルの毛布の割合はかなりのものになると思う。クリーニングの需要は年々減りつつも出てくる毛布の殆どはアクリル毛布。家やコインランドリーでも相当程度洗われているのではないかと ...

    家庭用軟水器 アクアソフト AQ-S401 概要  これまで洗濯と軟水の関係についてしばしば取り上げてきたが、あくまで業務用軟水器を使った話だった。では家庭用軟水器があるかといえば、実はなかなかというのが現状である。というのも日本は元々軟水の国で、浄 ...

    家を買ったが苦しいので売りに出している人の話  高校時代の友人と話していた時のこと。借金話となり、私の会社の創業以来の借金の金額と返済過程の話をした。無一文で始めたこと、無一文ゆえに運営費用も設備投資も借財からスタートしたこと、一番多いときには月 ...

    家を買ったが苦しいので・・・の続きの話  「家を買ったが苦しいので売りに出している人の話」で、思い切って家の購入に踏み切ったものの身動きできず困っている友人の話を大まかな流れで書いた。  この中で契機となった「リーマン・ショック」を受けての ...

    3度家を買い換えて一軒家を持った家族の先に  「生涯家を三度持つ」とは、家を三度建てないと理想の家にはならないという意味の言葉である。実際問題、建て方や間取りなどといった普段のくらしに常に影響する部分や、屋内屋外の様々な部分のメンテ性を知り抜く ...